《社説①・01.26》:トランプ2.0 「力の平和」と日本 外交の主体性が問われる
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.26》:トランプ2.0 「力の平和」と日本 外交の主体性が問われる
「米国第一」を掲げるトランプ政権が再始動し、日本外交の主体性が問われている。アジアの安定を図り、法の支配に基づく国際秩序を守り抜く必要がある。
トランプ大統領の就任式に出席した岩屋毅外相は、ルビオ国務長官と初めて会談し、日米同盟の強化で一致した。日米豪印の協力枠組み「クアッド」の外相会合も開かれた。
新政権の発足直後に一連の会談で連携を確認したことは、対中包囲網を維持しようとする意向の表れだろう。
中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発で、東アジアの安全保障環境は厳しさを増している。日米韓による協力も欠かせない。
ただ、トランプ氏は米国が制約を受けるような多国間の枠組みに後ろ向きだ。国際協調を損ないかねないとして、各国は警戒を強めている。
軍事力を背景にした「力による平和」を掲げるが、米国に過大な役割が押し付けられていると主張し、同盟国の負担増を求めている。
日本にも防衛費の増額を突き付けてくる可能性がある。米国防次官に起用されるコルビー氏は、国内総生産(GDP)比3%まで引き上げるべきだと述べている。
圧力をかける手法では同盟国との関係がきしみかねない。軍事的な抑止力強化に偏れば、結果的に地域の緊張を高めることになる。
ルールに基づく国際秩序にも背を向ける。敵対国、同盟国を問わずに高関税をふりかざす貿易政策には問題が多い。報復の連鎖を招いて世界経済が停滞すれば、米国にも悪影響が及ぶ。
戦後日本は、安全保障面で米国との同盟を深化させ、経済面では自由貿易を推進することで成長を実現した。米国の保護主義に歯止めをかける必要がある。
1期目のトランプ政権下では、米国が離脱した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を維持するため、日本は中心的な役割を果たした。2期目でも、こうした主体的な外交を追求すべきだ。
石破茂首相は来月にも訪米し、トランプ氏と会談する。首脳同士の信頼関係構築に腐心するだけでなく、国際ルールをないがしろにするような振る舞いには直言する姿勢で臨まねばならない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月26日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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