【社説①】:寿都議事録開示 独断専行の弊害あらわ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:寿都議事録開示 独断専行の弊害あらわ
高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた後志管内寿都町の文献調査を巡り、町は片岡春雄町長と町議が出席し、非公開で行われた町議会全員協議会の議事録全てを開示した。
非開示決定を取り消した函館地裁判決を受けた措置となる。請求した町民2人に示されたのは、2019年2月~20年11月の協議会37回分の議事録と配布資料だ。
20年10月に「肌感覚」で文献調査に応募した片岡町長は、応募までの議会対応も独断専行で進めていた実態が浮き彫りとなった。
北海道の未来に重大な禍根を残しかねない核ごみ問題の実質的な協議が密室で重ねられていた。地方自治の形骸化につながる由々しき事態だ。町と町議会は一連の経過を改めて道民に説明すべきだ。
片岡町長は20年2月17日、まず文献調査に関する「勉強会」を行うことで「エネ庁をくすぐり洋上風力を浮上させる」と述べた。
文献調査に前向きな姿勢を示す引き換えに、町が推進したい洋上風力発電で資源エネルギー庁から協力を得る考えだが、事実上調査応募への布石を打ったと言える。
20年3月3日の協議会で、複数の議員から文献調査への反対論が噴出すると、町長は「勉強会イコール調査をやるわけではない」と述べ、いったんは釈明した。
ところが、20年8月7日の協議会で、片岡町長は他の自治体で調査に手を挙げる動きがあると説明し「一番じゃないとだめだ」と述べ、表だった議論がないまま唐突に応募の意向を明言した。
片岡町長は文献調査と第2段階の概要調査で計90億円が交付されることについても「魅力です」と述べた。交付金目当ての露骨な本音を隠そうともしなかった。
この後は調査応募への流れが加速した。歯止めをかけることができなかったのは、町民不在の密室協議の弊害にほかならない。
片岡町長が「町民に伺いを立てて勉強会するって言ったらかえって面倒な話になる」と述べたのも8月7日の協議会の席だった。
さらに8月21日の協議会では、反対者を念頭に「あなたたちが風評被害。反対者は寿都を陥れようとしている」と話していた。
無害化に10万年かかる核ごみの問題に反対や懸念が寄せられるのは当然だ。
そうした声と向き合わずに反対派をおとしめる自身の態度こそ、町内に分断をもたらし、北海道の観光や1次産業の将来に影を落としていると認識すべきだ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月30日 06:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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