【社説②・11.29】:5歳児の健診 発達障害の支援に生かしたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・11.29】:5歳児の健診 発達障害の支援に生かしたい
乳幼児を対象にした健康診断は、子どもたちを心身ともに健やかに育むうえで大切だ。少子化が進むいま、その体制を一層充実させたい。
子どもの健診は現在、1歳半と3歳での実施が法律で市町村に義務づけられている。このほか小学校入学前にも、全員を対象にした就学時健診が行われている。
こども家庭庁はこれに加えて、「5歳児健診」の普及を目指して、実施する自治体への補助金を手厚くする方針を打ち出した。発達障害の早い段階での発見と支援につなげる狙いがある。
発達障害は、脳の機能に原因があるとされ、人との交流が苦手な「自閉スペクトラム症」や、注意力が続かない「注意欠如・多動症」などが該当する。
3歳では幼すぎて、発達障害を認知しにくい。また、入学前では、学校生活を円滑に送れるようにするための準備期間が足りない。5歳の時点が適しているというのはそうした事情からだ。
5歳児健診では、体の発育だけでなく、「こだわりが強い」「 癇癪 を起こしやすい」といった情緒や行動の傾向を診る。発達障害が早くわかれば、日常生活や学校で、その子の特性に配慮した教育やサポートができるはずだ。
例えば相手の意向をくむのが苦手なら、教員らは指示を具体的にすることが重要になる。
発達障害の子どもを放置すると、協調性や落ち着きのなさから集団行動になじめず、不登校につながりかねない。早期の支援は、不登校を防ぐための有効な対策になるのではないか。
5歳児健診を独自に行っている自治体もあり、実際に効果が上がっているという。
大分県竹田市では、発達障害に詳しい保健師らが保護者の相談に乗り、保育園や学校とも情報を共有して支援している。その結果、発達障害の傾向がある多くの子どもが通常学級に通うことができた。不登校も減少したという。
ただ、5歳児健診を導入しているのは、全国で14%の自治体にすぎない。財政難や小児科医の不足が理由だとされる。
5歳児健診が広く普及している鳥取県では、担当する医師やスタッフが足りない自治体は、子ども全員を対象にするのではなく、心配な行動が見られる子に絞って行う工夫をしている。
各自治体はこうした先行事例を参考にしてほしい。国は、健診や発達障害の子どもを支援できる人材の育成を後押しすべきだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月29日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます