《社説①・01.07》:石破首相の年頭会見 受け身では乗り切れない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.07》:石破首相の年頭会見 受け身では乗り切れない
少数与党の状況にあっても、トップ自らが議論のたたき台を示さなければ、熟議の実現は望めない。
石破茂首相が年頭記者会見で、「真摯(しんし)な政策協議でより良い成案を得る」と述べ、国会運営で野党に協力を呼びかけた。
置かれた立場は厳しい。衆院で多数派となった野党の協力を得ない限り、議案を成立させられなくなっている。
「熟議の国会」を目指すという首相は、臨時国会で補正予算案の修正に応じた。ただ、数合わせのための対応に終始したのが実態だ。
与党が「年収103万円の壁」の引き上げに応じる代わりに、国民民主党の賛成を取り付けた。一方、野党第1党である立憲民主党の予算減額要求は受け入れず、水膨れは解消されなかった。
通常国会での焦点は来年度予算案の審議だ。原案通りの成立が通例だが、今回は野党の賛成を得るための修正が予想される。
与党は、年収の壁の大幅な引き上げを求める国民民主か、高校授業料の無償化を公約に掲げる日本維新の会との協力を視野に入れている。
首相は会見で「野党にも責任を共有していただく」とけん制したが、要求を丸のみするばかりではさらなる財政悪化を招き、将来に禍根を残しかねない。
「政治とカネ」の問題も積み残されている。企業・団体献金の禁止について、自民には反対論が根強いが、国民の不信払拭(ふっしょく)に向け、首相は指導力を発揮すべきだ。
衆院選後、首相は野党や党内に配慮するあまり、「石破カラー」を封印し、相手の出方を待つ受け身の姿勢が目立っている。
年頭会見でも具体策は乏しかった。物価高対策として挙げた「賃上げと投資がけん引する成長型経済」への移行は、岸田文雄前政権の踏襲だ。
外交面でも、トランプ次期米大統領の就任に備えなければならない重大局面だが、「共通認識を持つことが重要だ」などと述べるにとどまった。
国会で首相が具体的に問題提起し、主張すべきは主張する。その上で野党の意見にも耳を傾け、議論を通じて合意形成を図る。そうした新しい政治のあり方を実現できるかどうかの正念場である。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月07日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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