【社説・09.03】:兵庫知事の疑惑 県政の混乱を収めねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・09.03】:兵庫知事の疑惑 県政の混乱を収めねば
兵庫県政の動揺が続いている。県局長だった男性が3月、斎藤元彦知事のパワハラなどを告発する文書を公表後に死亡して以降、疑惑は深まるばかりだ。先週、この問題で開かれた県議会の百条委員会で、知事は自らの言動は「合理的だった」とパワハラを否定したが、職員らの証言との食い違いは大きく、不当な人事処分への批判も強い。県政の混乱収拾のため知事としてどう身を処すべきか、真摯(しんし)に考えてほしい。
百条委では、新聞報道などを巡り部下を怒鳴った▽時に机をたたき、文具を投げつけたりした▽深夜や早朝にも、交流サイト(SNS)を使って指示した-といった職員の証言に基づき、知事の認識をただしたが、一貫してパワハラとは認めなかった。
局長だった男性の告発文は、パワハラのほか、企業への物品要求など7項目の不適切行為を指摘したが、知事は「うそ八百」と全否定。その後、男性は県の公益通報窓口にも通報したが、知事は調査結果も待たず、男性を停職処分とした。告発者への異動や解雇など不当な措置は法律で禁じられており、強引な事実の「隠蔽(いんぺい)」とみられても致し方ない。その後の男性の死は抗議の自殺ともみられている。今週の百条委ではこの問題で知事が再度、証人尋問される。
百条委によるアンケートでは、知事のパワハラを見たり、聞いたりした職員は4割近い。企業からの金品授受など他6項目の疑惑も「知っている」や「人づてに聞いた」が一定数いた。県職員労組が「もはや県民の信頼回復が望めない状況」として事実上、辞職を求めたのも無理からぬことだ。
知事は総務官僚出身で2021年に初当選し1期目。副知事は告発文の後、知事に5度も辞職を促したが聞き入れられず、自ら辞職した。百条委で部下とのコミュニケーション不足を指摘された知事は「人望より、いい仕事ができる態勢づくり」と述べたが、諫言(かんげん)にも耳を貸さない知事の独善的姿勢こそが問題の核心にも思える。
百条委は今後も尋問など検証を続け、年内にも報告書を取りまとめるが、知事への不信任決議案が議会で成立する可能性もある。県民は今、自分たちが選んだ知事がどう振る舞うか注視していよう。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年09月03日 07:34:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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