【大谷昭宏のフラッシュアップ・08.05】:毎日新聞9月で富山県内の配送を中止 生活文化の西風東風はやんでほしくない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・08.05】:毎日新聞9月で富山県内の配送を中止 生活文化の西風東風はやんでほしくない
順調というより日本好調のパリ五輪。体操の男子団体総合の金メダルなど歓喜に沸くテレビスタジオでは、新聞の号外紹介も恒例行事だ。
ただ近ごろ号外は、ほとんど読売1紙だけ。メダル獲得の保証もないのに記者を待機させ、発行となれば主要駅での配布要員の確保。経費面で朝日、毎日といった全国紙も二の足を踏んでいるのが実情だ。だけど号外はある意味、歴史の証言者。コレクターもいるのに、と思っていたら、もっと深刻な話が飛び込んできた。
毎日新聞が9月末をもって富山県内の配送を中止すると発表した。聞けば、県内の販売部数は約850部。営業面で耐えきれなくなった。県内取材は続け、郵送講読も可能というが、「全国紙」とは言い難い。
残念と思いつつ、東京のホテルで、毎日の朝刊を繰っていると、生活面の「女の気持ち」欄に<かす泥棒>の見出しで長野県大町市の79歳女性のほのぼのとした投稿が載っていた。
小さな畑で取れたキュウリをかす漬けにしたが、おいしくなったお正月には食べきれず、かめにポリ袋でフタをして物置に-
<4月ごろ、ふと思い出して見に行くと、ポリ袋がズレてアメ色のキュウリが3本。かめの深さの半分以上あったかすは? 一瞬、目が丸くなりました。「かす泥棒がいる!」>
女性の家は山の中。熊も鹿もカモシカもイノシシも。でも、かめの穴は小さいから、キツネ、タヌキ、それとも猿?
<だけど、あんなにたくさんかすをなめてしまったら、酔っぱらうに決まってます。千鳥足で帰っていった動物の姿を想像し、クスッと笑ってしまいました>
大町はアルプスの麓の市。その山の中の女性のお宅に毎日新聞が配られていたからこそ届いたこの便り。新聞はニュースを送り届けると同時に、人々の生活や文化を運ぶ西風東風。酔った熊も猿も“大トラ”って呼ぶのかな、なんて考えながら、この風はやんでほしくないな、と願っていた。
◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)
ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。
![大谷昭宏のフラッシュアップ](https://cache2.nipc.jp/general/column/flashup/img/icon.png)
■大谷昭宏のフラッシュアップ
元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】 2024年08月05日 08:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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