【社説・12.25】:臨時国会閉幕 数合わせ排し政策協議を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.25】:臨時国会閉幕 数合わせ排し政策協議を
衆院選で少数与党になって迎えた初めての臨時国会がきのう閉幕した。閣僚の答弁は丁寧になり、野党も反対一辺倒ではなくなった。政治資金規正法の再改正などを審議した政治改革特別委員会は与野党提出の9法案の審議で答弁席に各党の実務者が並び、討論を繰り広げた。「自民1強」時代にはない光景だろう。
閉幕を受けた記者会見で石破茂首相は「可能な限り幅広い合意形成を図るように一生懸命努力した」と語ったが、政策議論が深まったとはまだ言い難い。自民、公明両党が2024年度補正予算などの成立を最優先し、野党も目先の成果を欲しがったためだ。
与党からの政策協議の誘いに乗って野党が安易に妥協を重ねる。そんな数合わせに終始するようでは、国民本位の政治とはいえまい。
その象徴が補正予算を巡る攻防だろう。
国会の場外では、国民民主党が「年収103万円の壁」の引き上げ、日本維新の会が教育無償化の協議を与党に求め、補正予算への賛成に回った。個別の要求が取り入れられれば、さまざまな問題をはらむ予算全体を承認する。そんな手法が適切なのか。
自公は同時に、立憲民主党の要求に応じる戦略を見せる。能登半島地震の復旧・復興費を1千億円上積み、採決容認を取り付けた。同党は採決で反対したものの、「規模ありき」で編成された巨額補正をすんなり成立させてしまったことに変わりはない。緊急性や妥当性の吟味がしっかりできたか疑問である。
その意味で野党第1党の立憲民主党が野党をまとめ切れず力量不足だった。自民党の「壁」を乗り越えるために、野党間で協力して予算の修正案や法案をまとめる仕組みを取り入れるべきではないか。
例えば103万円の壁を引き上げるなら、目的や効果、負担の公平性を精査し、社会保障とセットで大局的な議論を進めたい。その場しのぎではなく、政策の深掘りこそ、今の国会に求められているはずだ。
政治資金改革では、使途公開不要な政策活動費の全廃を野党が一致して求め、自民党にのませて実現させたのは評価したい。一方で企業・団体献金は自民党が存続を主張。立憲民主党や日本維新の会などが禁止を求めて対立した。与野党は立憲民主党などが共同提出した禁止法案について、来年3月末までに結論を得ると先送りした。
与野党協議では、政治資金の透明化はあくまで手段であり、目指すべきは「カネのかからない政治」と改めて確認したい。裏金事件の全容解明も不可欠である。精力的に議論を重ね、踏み込んだ改革を実現してもらいたい。
与党は臨時国会こそ乗り切ったものの、来年の通常国会で25年度予算案などを成立させる見通しは立っていない。来夏の参院選をにらんだ政局の動きが出てくる可能性もあろう。それでも少数与党時代は、熟議を通じた政策実現の絶好の機会だ。各党が審議の充実に責任を持たなくてはならない。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月25日 07:00:00 これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。
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