路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説】:原発60年超運転 国民の不安、残ったままだ

2023-06-11 07:00:25 | 【電力需要・供給、停電・エネルギー政策・原発再稼働・核ゴミの中間最終貯蔵施設他

【社説】:原発60年超運転 国民の不安、残ったままだ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:原発60年超運転 国民の不安、残ったままだ

 「原則40年、最長60年」と定めている原発の運転期間の延長を可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」が成立した。東京電力福島第1原発事故を機に掲げた「脱原発依存」の看板を、政府と国会が下ろしたことを意味する。

 運転期間の制限は安全性を高める対策の柱として事故翌年の2012年に導入された。廃炉作業は終わりが見えず、古里を追われ、福島県内外で避難生活を送る人はいまだ約3万人もいる。「安全神話」は崩れ去り、原発に頼らぬ社会を目指すことが国民の合意だったはずだ。

 法整備の理由となったロシアのウクライナ侵攻による電力逼迫(ひっぱく)や脱炭素社会への取り組みと、原発の安全性は別の話である。過酷な事故を忘れたかのような決定は受け入れがたい。

 同法によって運転期間の規定は、原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁が所管する原子炉等規制法から、経済産業省所管の電気事業法に移される。今後は経産相が60年超運転の可否を、規制委が安全性をそれぞれ判断する仕組みになる。

 法整備を巡っては、事故の大きな教訓だった「規制の独立性」も揺らいでいる。

 政府が原発推進にかじを切ったのは昨年8月。岸田文雄首相の指示だった。その後、法改正や次世代原発開発などの議論が経産省を中心とする一部関係者で進められ、短期間で固まった。

 特に運転延長を巡っては、規制庁と経産省が水面下で歩調を合わせていたとされる。しかも規制委の会合では委員5人のうち1人が反対したのに議論を尽くさず、異例の多数決で承認した。法成立を受け山中伸介委員長は「これから規制委の真価が問われる」と述べたが、「安全政策」が経産省の「推進政策」に押し切られた感は否めない。

 世界最長の運転期間はインドのタラプール原発の約53年で、60年運転した例はない。老朽原発の劣化に関する知見が限られる中で、安全性をどう担保していくかが問われる。

 規制委は新たに運転開始30年以降は最長10年ごとに審査をする制度を敷く。自らの責任を自覚し、厳格な審査基準を設け、体制充実も図らねばならない。「駄目なものは駄目」と言う覚悟で審査に当たる必要がある。

 今回の法整備では、議論の進め方にも多くの疑問点が残った。原発事故の被災者や次世代を担う若者を含めた多様な利害関係者が意見を表明する場がほとんどなかった。

 国会には五つの法改正をまとめた「束ね法案」として提出された。「原子力の憲法」と呼ばれる原子力基本法にも手を付け、原発活用による電力安定供給や脱炭素社会の実現を「国の責務」と踏み込んだ。

 審議時間は不十分で、増え続ける高レベル放射性廃棄物(核のごみ)など、原発が抱える数多くの課題に政府は納得できる回答をしなかった。原発事故12年を前に実施された全国世論調査では、60年超運転を支持する人は3割にも満たなかった。国民の不安と向き合わない態度で無責任と言わざるを得ない。

 国の将来を左右する重要なエネルギー政策が拙速な手法で決められたことは、後世に禍根を残す。本当にこの道でいいのか、国民的な議論が足りない。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2023年06月08日  07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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