【天風録】:恐竜と人類
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:恐竜と人類
全長10メートルを超す2体の全身骨格の展示に思わず「おおっ」と声が出た。上野の国立科学博物館で開催中の恐竜博でティラノサウルスを見た。上腕部はかみつかれた痕のある実物の化石だ。つい長居して、太古の地球に思いをはせた
▲巨体を誇り、生態系の頂に立った恐竜は6600万年前に絶滅した。原因は隕石(いんせき)の衝突。その時に発生したガスやちりが太陽光を遮り、寒冷化した気候変動が追い打ちをかけたよう。地層に残る化石や物質で判明した
▲恐竜が栄えた地質年代を「ジュラ紀」「白亜紀」と呼ぶ。今、国際的な学術団体は「人新世(じんしんせい)」を議論する。人類が地球環境に与える影響が大き過ぎ、1950年代以降を新たな地質年代に位置付けるという。決まれば、地球史の物差しとなる
▲人新世を代表する地層を選定中だが、後世から非難を浴びそうな人工の堆積物ばかり目につく。化石燃料の炭素、肥料の窒素、マイクロプラスチック、核実験によるプルトニウム…。人類の生きた証しが、これである
▲地球で生物の大量絶滅は過去5度あり、最大で95%が姿を消したとされる。気候変動や核戦争が原因の大量絶滅が、地層に刻まれはしないか。恐竜は問いかける。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2023年06月09日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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