【社説・11.21】:宮城島土砂搬出 島を削り基地造る愚行だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.21】:宮城島土砂搬出 島を削り基地造る愚行だ
自然が豊かな島を削って運び出した土砂を美ら海に投じ、県民の幸福に逆行する新基地を建設する。あまりにも愚かな行為であり、即刻中止を求めたい。
米軍普天間飛行場の返還に伴う辺野古新基地建設で、沖縄防衛局はうるま市与那城の宮城島にある採石場から埋め立て土砂に用いる岩ずりの搬出を開始した。陸路で中城湾港に運んだ後、海路で新基地建設現場に向かうものと見られる。防衛局は9月から土砂調達の調査を進めていた。
面積約5.5平方キロ、人口570人(今年10月現在)が暮らす宮城島が新基地建設に用いる土砂の供給源となるのだ。大型ダンプの往来が増加すれば、地域の住環境に悪影響を与えよう。自然環境にもダメージを与えることにならないか。島の土砂が基地建設に用いられることに複雑な思いを抱く住民もいるはずだ。
大浦湾側の軟弱地盤改良のため沖縄防衛局が2020年、県に提出した設計変更申請書で、県内での土砂調達可能量は当初の670万立方メートルから約6.7倍の4476万立方メートルに増えている。
当初の土砂採取地は国頭地区と本部地区だったが、設計変更申請で南部地区(糸満市、八重瀬町)と宮古島市、石垣市、南大東村と共に宮城島が新たに加わった。宮城島の土砂調達可能量は30万立方メートルと見積もっている。
防衛局は現在、本部町と国頭村で土砂搬出を実施しており、宮城島が今回追加された。大浦湾の軟弱地盤を改良するため、県内全域から土砂をかき集める新基地計画は無謀というほかない。
軟弱地盤改良は難工事が予想されており、土砂使用量もさらに増える可能性がある。県外から特定外来生物流入を食い止めるために土砂の持ち込みを規制する「土砂条例」は、県内の土砂を対象にしていないが、そのことを理由に県内での土砂採取の比重が高くなれば環境への負荷は一層深刻なものとなる。
土砂採取に関しては、沖縄戦犠牲者の遺骨が混入する可能性がある南部土砂の使用に強い反対がある。沖縄戦体験に基づく県民の平和志向の表れであろう。県議会は21年4月、戦没者遺骨を含む土砂を埋め立てに使用しないよう国に求める意見書を全会一致で可決した。那覇市、名護市、糸満市など県内自治体で同趣旨の意見書可決が相次ぎ、この動きは県外にも広がった。
同様に新基地建設のような、沖縄の自然を傷付ける施策に県民は抵抗してきた。宮城島や隣の平安座島などでは1970年代、石油備蓄基地(CTS)反対運動を展開した経験がある。今回の土砂搬出も宮城島の歩みに照らせば受け入れられるものではない。
土砂搬出についてうるま市やうるま市議会が現時点で具体的な対応を示していない。島の自然を守り、地域の歴史や住民感情に沿うよう搬出反対の意思を示すべきだ。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月21日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます