【社説①・02.10】:浦添市長に松本氏4選 オール沖縄勢力の完敗だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.10】:浦添市長に松本氏4選 オール沖縄勢力の完敗だ
任期満了に伴う浦添市長選挙は9日に投開票され、自民、公明の推薦を受けた現職の松本哲治氏が4選を確実にした。
3期12年の実績を前面に市民からの支持を得た。選挙戦は現職と新人の一騎打ちとなったが、新人候補の出馬表明は告示直前だった。松本氏は、最終盤の本紙のインタビューに「3期12年間の信任投票になる」と答えている。選挙結果におごることなく、有権者の負託に応えるよう市民生活向上に取り組んでほしい。
現職への「信任投票」の様相が色濃くなった市長選となり、政策論争が深まったとは言い難い。両候補で大きく主張が異なった那覇軍港の浦添西海岸への移設を巡っても論戦は低調だったと言えよう。
那覇軍港の無条件返還を訴え移設に反対する新人候補に対し、松本氏は容認の立場で、「県と那覇市と協議した結果」として現行の移設計画に準じて西海岸開発を促進するとしている。
松本氏は、2013年に移設反対を公約に掲げ初当選したものの、15年には容認に転じた。17年、21年の市長選でも軍港移設が争点になったが、移設を容認する松本氏がいずれも勝利した。
那覇軍港移設を巡っては、国と県、那覇、浦添の両市が22年、民港部分北側に「T字型」の代替施設を設置する形状案を了承、24年8月からは西海岸で掘削調査が始まっている。
日米両政府は、代替施設について「現有機能の維持」を強調するが、那覇軍港の機能は明らかにされず完成後の運用の説明もない。県内の米軍基地の実態を見れば、米軍の運用次第で機能強化が進む懸念は払拭できない。
西海岸は豊かな生態系が残る「宝の海」だ。告示直前の立候補だったが、移設反対を訴えた新人候補は政党の推薦がなかったが、約1万5千票を獲得する見込みだ。根強い移設反対の意思が存在している。移設のない軍港返還と、自然環境を生かした民港整備を改めて模索すべきだ。
今年に入り自民、公明は沖縄市に続き推薦候補が勝利した。一方、自公勢力に対峙(たいじ)してきた、玉城デニー知事を支えるオール沖縄勢力は、浦添市長選で候補を擁立できず、玉城知事を評価する新人候補への推薦もなかった。事実上の完敗だ。
玉城県政が軍港移設を容認する中、各党間だけでなく、県政与党と市議会野党の溝は埋まらなかった。「辺野古移設反対」以外では一致できないもろさが顕在化している。
オール沖縄勢力の存在意義が問われる深刻な事態と言えよう。また、市議会野党は議会の「総与党化」を許したと言わざるを得ない。選挙において多様な選択肢を提示し政策論争を深めることが、ひいては有権者の生活向上につながる。候補を擁立できなかったオール沖縄勢力、市議会野党には、自省を求めたい。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月10日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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