【社説①・02.11】:米がICC制裁 国際司法へ圧迫は容認できぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.11】:米がICC制裁 国際司法へ圧迫は容認できぬ
日本など125の国と地域が加盟する国際刑事裁判所(ICC)への制裁は、法の支配に基づく国際秩序への攻撃にほかならない。米国に制裁の撤回を求める。
トランプ米大統領が、ICC職員らに制裁を科す大統領令に署名した。ICCが昨年11月、戦争犯罪などの疑いでイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出したことを、同国と米国に対する「非合法で根拠のない行動」とした。
大統領令は、職員とその家族に対し、米国内の資産凍結や、米国への渡航禁止などの措置を取るとしている。具体的な対象者はまだ明らかにされていない。
ICCを巡っては、米連邦議会上院が制裁法案を否決していた。トランプ氏はイスラエル支持をより鮮明に打ち出すために、議会の承認を必要としない大統領令での制裁に踏み切ったのだろう。
ICCは、集団殺害など重大な犯罪を犯した個人を訴追、処罰する独立の常設機関として、2002年に発足した。
米国や中国、ロシア、イスラエルなどは未加盟だが、ICCが23年にウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領に戦争犯罪容疑で逮捕状を出した際には、当時のバイデン米政権が「妥当だ」と支持していた。
トランプ政権に交代したからとはいえ、米国がイスラエルを擁護する目的のために、アフリカなど各地域の重大な犯罪も扱うICCに圧力を加えることは、司法に対する挑戦と言わざるを得ない。
ICCの赤根智子所長は、米国の制裁について「断固拒否する」と非難する声明を発表した。フランスやドイツなど加盟する約80か国も連名でICCへの支持を再確認する声明を出した。
この声明に日本が加わらなかったのは極めて残念だ。石破首相とトランプ氏との会談に悪影響を及ぼすことを懸念したのだろうが、ICCは現在、日本人が所長を務め、日本が最大の分担金を拠出している国際機関である。
法に基づく国際秩序の重要性を主張してきた日本の対応としては、あまりにもふがいない。
米国が制裁を発動すれば、対象者のみならず、資金や物品、サービスを提供する側にも影響が及ぶ可能性が高い。すでにいくつかの業者からICCとの取引を停止したいとの申し出があるという。
林官房長官は「ICCの独立性や安全を尊重する」としている。ICCが活動を継続できるよう、具体的な行動で支えるべきだ。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月11日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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