【社説】:派閥の政治資金 透明化へ「ザル法」見直せ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:派閥の政治資金 透明化へ「ザル法」見直せ
訂正すればおしまい、とはいかない。ずさんな会計処理を繰り返す原因を突き止め、政治資金を透明にする仕組みを作る契機とすべきだ。
自民党の5派閥の政治団体が政治資金収支報告書に収入を過少記載したとする告発状を受け、東京地検特捜部が派閥の担当者らを任意で事情聴取している。
告発状を提出したのは大学教授で、2018~21年分の収支報告書に政治資金パーティーの収入を実際より少なく記載した政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)の疑いがあるという。
派閥の収支報告書と、パーティー券を購入した業界団体の収支報告書を照らし合わせたところ、派閥の報告書にはない20万円を超える支出が多数見つかった。記載されなかった収入の合計は約4千万円と指摘している。
政治資金規正法は、20万円を超えるパーティー券を購入した個人や団体の名前と金額を政治資金収支報告書に記載するよう定めている。
少なくとも4年にわたって過少記載が続いていたとすれば継続性があり、単純ミスと説明するだけでは納得がいかない。野党が何らかの意図を疑うのは当然だろう。
「政治とカネ」の問題には国民の厳しい目が注がれる。自民党はもちろん、国会議員は厳しい姿勢で対処しなくてはならない。
ところが、自民党総裁である岸田文雄首相の国会答弁は「各政治団体がそれぞれの責任で点検し、必要な対応を行うべきだ」と素っ気ない。首相になってからも岸田派の会長を続けているのに、当事者意識が感じられない。
派閥の説明では、不記載は一つの団体が同じ派閥の複数の議員からパーティー券を購入した場合に発生している。議員1人からの購入額が20万円に満たないため、収支報告書から漏れていた。各派閥は収支報告書の訂正作業を終えたという。
パーティー券の購入額が20万円を超えないときは匿名扱いになる。政治資金収支の報告義務がない個人や企業の購入額が20万円を超えても、派閥が報告書に記載しないと実態はうかがい知れない。
政治資金規正法が抜け穴だらけの「ザル法」と呼ばれるゆえんだ。過去にも、裏金づくりや献金隠しが何度も明るみに出ている。
昨年12月には、政治資金パーティーなどの収支を報告書に少なく記載したとして、自民党を離党した元衆院議員が政治資金規正法違反の罪で罰金100万円、公民権停止3年の略式命令を受けた。まだ記憶に新しい事件だ。
首相は国会で「国民から疑念を持たれることがないよう努めたい」と語った。
その言葉を具体的に実践してもらいたい。政治資金の抜け穴をふさぎ、透明性を高める必要がある。与野党で政治資金規正法の改正論議を始めるべきだ。
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【社説】 2023年11月27日 09:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。