アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

こんなに笑えるクラシック…が昔もあった

2010年09月18日 | ピアノ
「こんなに笑えるクラシック音楽が」というのはのだめのコピーであるが、ずっと昔に、めちゃくちゃ笑える音楽ドラマがあったのをご存知だろうか。

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1988年放映というので私が大学生だったころだ。富田靖子主演で風間杜夫が世界的大ピアニスト役、木村一八が世界的大指揮者役。そのピアニストと指揮者の組み合わせでチャイコフスキーのピアコンやって、コンサートが終わったところへ富田が突然やってきて、風間に「私を引き取ってください!!」と迫るところからドラマ「疑惑の家族」が始まる。

富田は北海道で十八年間、母子で暮らしていたんだけど、その母は昔、風間とラブラブだったのだが、あるとき風間に捨てられて失踪して、こっそりと風間の子を生んで育てていた(と富田は思っている)という設定。母が亡くなって富田が上京してきたのだ。

でまぁ、お約束のように富田にピアノの才能があって、風間のもとでしばらく特訓すると風間や木村が教鞭をとる音大に編入するわ、さらにしばらく経つと毎朝ピアノコンクール(という、日本で一番権威あるコンクール)に優勝するというストーリーなわけ。

というわけでちょっと聞いただけでツッコミどころ満載なんだけれども、話はこれだけじゃなくてね。長年風間のライバルなんだけど負け続けている伊武雅刀が、風間を蹴落として音大の学長におさまろうと狙っていて、次々あほらしい策謀をめぐらすんだけど、その娘役が井森美幸で、木村をめぐって富田と微妙な三角関係だったりするのだ。

つまり、豪華キャストでお送りするドタバタコメディー…特に、富田と風間のアクションシーンやら伊武が語るときの堂々たるアホっぷりがすばらしく、しょっちゅうけっつまづいて転んだりする富田の体当たり演技は
…元祖ぎゃぼん??
という感じである。

というわけで、この殴り合いで親子の絆を深めるアクション音楽メロドラマコメディーは、なかなか見所満載だったんだけれども、ひとつ大きく「のだめ」と違っていたところがある。

それは、音楽シーンに説得力がなく、薄っぺらで嘘が多かったということであり、要するに、「のだめ」を見て音楽を始めた人はたくさんいたが、「疑惑の家族」を見て音楽を始めた人はいなかっただろうということだ。

音大、ピアニスト、指揮者…いろんなアイテムはあったのにもったいないことだが、ともかくそこに主眼がなかったということだろう。

まず、曲目がとても限られていて、風間と木村の共演は「チャイコ」、音大編入の曲は「ハンガリー狂詩曲」、コンクールの曲は「ラ・カンパネラ」ってことで、ほとんどこれしか出てこない。考えてみてください。全員が「ラ・カンパネラ」ただ一曲を弾くコンクールですよ!?

風間のピアノとかもものすごく下手で、チャイコの出だしはご存知のとおり大きな三拍子で和音をつかんでいくわけだが、下→真ん中→上…ととりあえずそのへんをたたいているだけで、ぺちゃんぺちゃんという手つきがウケを狙ってるとしか思えない。また、井森がピアノを弾くときの異常な揺れ方は話題になったくらい。

音大ピアノ科のピアノ指導が、小学校の音楽スタイル(つまり集団)で行われるところも笑える。「はい、次、○○さん」てな感じでみんなの前で弾く。ドラマの進行上(つまり、互いにガンとばしたりする都合上)このようになっているのだろうか。

そして、世界的大指揮者の「三角形の指揮」がもう笑いをこらえきれない。小学生じゃあるまいし、という感じでものすごく下手で、千秋がドラマの最初のころあまりうまくなかったけど、そんなの比じゃない。いくらなんでも、誰か指導してやってもうちょっとなんとかすればいいのに、と思ったが…

なんでも、木村一八はそもそも「拍子をとる」という概念がなく、行進曲程度の二拍子をふらせるだけでもそれはそれは大変だったとか。三角形まで来るのもえらいことだったらしい。

富田だけはわりとまともな動作でピアノを弾いていて、彼女はほんとにソナチネくらい弾けたそうだ。

そんな具合に、音楽ドラマとしてはまったくなってなくて、残念感が漂うんだけど、文句なくおもしろい(笑える)ドラマだったのよ。最後まで見たかったんだけれど、木村の不祥事で急遽中断され、大慌てで全部の筋の決着をつぎはぎして終わっちゃった。残念。

このドラマは、いまでもYouTubeで見ることができます。

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コメント (4)
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