18:30、ハバロフスク駅到着。早速荷物をひいて列車へ向かう。日本と違ってプラットホームは線路と同じ高さだ。車両に乗るにはステップを3段ほど登らねばならない。スーツケースを持っているので結構これは面倒だ。
ハバロフスク駅(Google Map)
列車の名前はオケアン(ОКЕАН)と言い、「海洋」という意味だそうだ(英語のOceanにあたる)。ハバロフスク−ウラジオストク間の夜行列車であるから、極東の海に近い所を走るという意味で海洋なのだろう。シベリア鉄道はほとんど内陸の森林、平原を走っているが、例外的にこの区間では海が近い。確かに翌朝、ウラジオストク近辺になると、列車は海沿いをしばらく走った。そういう意味でこの列車にふさわしい名だ。
個室は4人部屋で、両側に上下2段のベッドができる型式。
19:07、既に日が暮れ、真っ暗になったハバロフスク駅から、列車は静かに発車した。日本の寝台特急もそうだが、電車特急ではなく、牽引車が客車を引く列車なので、モーター音がしない車内は静かだ。
列車に乗ってしまうと特にやることがなくなってしまう。そこで早速ベッドの用意をして、日記を書いたり、カードゲームをしたり、思い思いにリラックスする。
アレキサンドル氏が気を遣ってくれて、熱いチャイを出してくれる。チャイはロシアの紅茶。各車輌の端のデッキ近くに熱湯の出る給湯器があり、そこで湯を汲みチャイをいれる。車内では、ガラスカップの外側に把手付きの金属製のコップ受けがついたマグカップを使っている。熱いチャイを入れるのにガラスコップだとやけどをしてしまうからだろう。コップの底にはかなりの量の砂糖が入れてあり、これをスプーンで適当にかき混ぜ、好みの甘さにして飲む。チャイ自体は香りも良くおいしいが、砂糖の加減は全く大陸風の大雑把な感じで、最初にちょうど良い甘さにしてしまうと、飲んでお湯の量が少なくなるにつれ、どんどん甘くなってしまい参ってしまう。甘くなったら、またチャイを注ぎ足せば良いと言われたが、そういうことじゃないだろ・・・。
車内は暖房が効いていて暑いぐらいに暖かい。結局就寝時には少し涼しい廊下の空気を入れるために、個室と廊下の境の扉を少し開けておくことにした。車両の両端には仕切扉があり、その外側にトイレがある。ロシアのトイレはやはり全体に臭くて、慣れるまでに少し時間がかかる。
21:30頃、ビャゼムスカヤという途中駅に停車。夜中なのだがそれなりに乗降する人々はいた。しかし駅周辺にしか灯りはなく、町は全く静かに寝静まっている。ハバロフスク・ウラジオ間に大都市はなく、途中は森林や原野が大半なので、外は真っ暗。鉄道で窓外の風景を楽しむことはほとんどできない。また冬場は列車の窓が二重窓になっており、ネジで固定されているので、窓を開けて景色を見ることもかなわない。しかもそのガラスが汚れているので、窓外の風景はずっとソフトフォーカスだった。
22時頃になって、ハバロフスクの市場で500RBで購入したサケの薫製を、皆で食べる。手持ちのナイフで薫製を開き、ちぎって食べていく。これが意外に甘くてなかなか旨かった。気持ち悪がってあまり食べない者もいたが、私たちは結構パクパク食べてしまった。
この後、先生も含めてロシアントイレ談議に花が咲いた。曰く、なぜ便座が無いのか? なぜ水が溜る所が手前側なのか? それではどちら向きに座るのが正しいのであるか? 寒い所ではトイレはどうなってしまうのか? ブツや液体は凍ってしまうのか? いやはや大の大人が寄ってたかってする話ではないような気もしたがまあ良い。トイレひとつとってもカルチャーショックなのだ。
1992年10月 ロシア日記・記事一覧
#鉄道
#夕景・夜景