最近の銀座にはちょっと面白い建物が増えている。一昨年、銀座にできたルイヴィトン並木通り店もその一つ。

所在地:中央区銀座7-6
建設年:2004.9
設計:青木淳
Photo 2005.6.12
昼間に訪れると窓がほとんどない白っぽい箱のように見える。付近には飲食店やバーなどの袖看板が多く取り付けられた雑居ビルが多く建ち並ぶ。しかしこの建物には、LOUIS VUITTONというロゴ文字以外には文字が全くない。また、玄関と1Fのショーウィンドウの他には、数カ所に四角い窓があるが、この他にはほとんど装飾らしいものが見あたらない。
壁面の中には白く四角い部分がところどころにある。小さく白い斑点のようなものもたくさんあるのだが、何だろうこれ? という感じ。ただ、このある意味のっぺりしたシンプルな外観は、周辺の雑居ビル群とは異質であるので、逆にかなり目立っている。

Photo 2005.4.10
しかし、夜になると、この白い箱は不思議な灯りの箱へと表情を変える。建築設計上の詳しいことはよく知らないのだが、excite.ism内の記事によるとこの壁はGRCという石のように見える素材でできていて、その中に透過性のある天然石が嵌め込まれているらしい。そのため内側からの光を通す天然石部分が光ってみえる。光を通す部分も、通さない部分も共に白っぽく、また窓枠もなく、表面がフラットになっているため、昼間はただの白い箱に見えているのだが、夜になると、光がちりばめられた箱になるのだ。ぼんやりと光るさまは形を変えた行燈のようでもある。
全ての壁面を白いパネルとして、そこにランダムに窓を穿ったあたりは、モダニズムで言うところの「自由な立面」の一つの新しい解釈でもあり、現代的モダニズム建築なのかもしれないなと勝手に思った。
GRC=Glass Fiber Reinforced Concrete(ガラス繊維強化セメントコンクリート)

Photo 2005.4.10
建物は面白いなーと思うけど、残念ながら、個人的には今のところ全くご縁がないお店です、ハイ。だから内装の方は全然知らないんだな、これが。
1階には、上の方の窓と同じような大きさの、小さなショーウィンドウがあり、ここにも展示がされている。小さな窓なので、つい近づいて覗き込んでしまうようになっているところがミソ。

Photo 2005.4.10
新聞その他でも取り上げられているが、近年の建築の一つの流れとして、外観の見た目の新しさ勝負みたいなところがあるようだ。内部空間の利用形態とか、そこでの空間の体感を中心にして、そこから外観が出来上がって来るというのが、今までは一つの設計手法として重要視されていたように思う。またそれが「正しい」考え方なのだという信念のようなものがあったのではないだろうか。もちろん今でもそれは大切だとは思われているのだろうけれど、一方で、人目を引く外観に力点を置いた建物も店舗などを中心に増えてきた。銀座や表参道などの場合、建物の外観はブランドイメージをアピールし強化する、一つの媒体として、近年は非常に重要視されている。このため、他よりも高級感がありつつ、上品でなおかつ目立つという、ある意味、明快な目的=デザイン方針を持った建物が生まれるようになった。
そして銀座という、大正期以降にブランド化した場所に、これらの店舗が集中したことによって、銀座は建築的にも面白いものが多く見られる街になったのである。
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