皇居前に行ったあと、更に足を伸ばして夕暮れの中、三信ビルへ。拙HP内のTokyo Lost Architectureでも、三信ビルは既に取り上げているが、テナントの多くが撤退を始め、いよいよかという雰囲気になってきたので、改めて見に行ってみた。
やはりこちらも玄関先に「テナントの迷惑になりますから写真撮影はお控え下さい」と書いてあった。新聞などで取り上げられたこともあって、土曜の夕暮れにも関わらず、次々に見学者が訪れている。丸ビルもそうだったが、この建物も多くの人に愛されたビルだったに違いない。ただ三信ビルの場合、そこで働いていたという人だけでなく、アーケードの美しさに惹かれて何度も訪れる人が多い気がする。男性に連れられてやってきた女性が、アーケードに入るなり上を見上げ、うわぁきれいと、感嘆の声を上げる。古くても良いものは良い。
この建物についても、老朽化、耐震性の不足が言われて建て替えが決定しているが、やはり企業的には土地の有効活用が建て替えの実質的な目標であろう。現行の制度下では、残す手だてはやはりないのかなぁと、これまた残念。
今回はHPでは取り上げていない部分を少し。まずは外観から。


所在地:千代田区有楽町1-4
建設年:1929(昭和4)
構造・階数:SRC・8F+B1F
設計 :松井貴太郎(横河工務所)
備考 :2004建て替え決定
Photo 2006.2.4
左は建物の北側の様子。あまり北側の写真は見かけないし印象もなかったのだが、改めて見てみると横連窓のモダンなファサードになっている。その部分だけ出っ張っていたりして、もしかすると増改築等をしたのかもしれない。この建物の歴史を詳細には知らないのでその辺は不明だが、北側の採光を良くするために、最初から横連窓で窓を大きく取っていたとしたら、なかなか先進的な建物だ。
右は西側の玄関部分。昔より道路際の階段の段数が増えていると、昔を知る人が言っているそうだ。道路の方が地盤沈下したためかもしれない。たしかに基壇部分がやや不自然である。

壁面詳細
1、2階の壁面に貼ってある石板は、それぞれ4本のボルトで留められている。ウィーンにあるオットーワグナー設計の郵便貯金局他でもパネルがボルトで留められたりしているが、ちょっとそれに似ている。
さて内部を改めて見る。何度来てもいろいろ発見があるが、今回は通路上部の装飾。

エレベーターわきの通路上部の装飾
アーチ型の中に、鳥が羽を少し広げて通路を見下ろす形の紋章が付けられている。アーケードのアーチ部分にも鳥の彫像があるが、現代の建物にはこのような装飾はあまり付かないので印象深い。再開発建物にも、このようなディテールを是非存続させて活かして欲しい。
三信ビル その1 その2 その3 その4
2007.1.20の様子(追記)
Tokyo Lost Architecture
#失われた建物 千代田区 #近代建築 #昭和戦前期 #松井貴太郎(横河工務所)