「ぎふ屋」は西武新宿線の新井薬師前駅北口商店街にあるお店。
ぎふ屋
所在地:中野区上高田5-44
構造・階数:木2
Photo 2005.6.12
もともとは昔ながらのたばこ屋さん。タバコが並ぶカウンターの奥に、昔は看板娘だったとおぼしきおばあちゃんが、テレビを見ながらのんびり座って、お客の相手をしていた。お客さんも年配の方が多く、あとは外回りの営業マンが訪れて100円ライターを買ったり。昔は店先の公衆電話もよく使われていたが、最近はあまり使っているところを見掛けなかった。お店前面の半分以上を自動販売機が覆ってしまっていて、ある意味、典型的な老朽化タバコ店だった。
私がこの近辺に来た当初は、このぎふ屋の並びには他に何軒かのお店が建ち並んでいた。例えば、朝日生命はRCの二階建てだったが、店舗が統廃合されてなくなった。木造のライオン食堂というのもあったが、かなりくたびれた感じのまさしく食堂で、入ることがないままいつのまにか閉店。それからたしか履物屋さんもあった。
街並みがパタパタと変化してしまったので、昔のことをすっかり忘れていたのだが、近所で話をしている内に、急に当時の景色が甦ってきて、自分でもかなりビックリした。でもその頃の写真、全然撮ってなかったなぁ。
いつのまにか周囲のお店が無くなり、その跡地は東亜学園の敷地に取り込まれ、数年前には学校の校舎が建て替えられて周囲の様子は一変した。道路沿いに一軒だけ残ったぎふ屋も、周囲を学校に取り囲まれる結果になり、早晩無くなるかと思われた。ところがそうはならず、このお店は営業を続けたのだった。
さて、今年の3月頃に、お店の改装をするという貼り紙が出たので、ふーん、改装ねぇ、いったいどうするんだろ? ピンとこないなぁと、やや不思議に思っていた。改装なので建て替えではない。他のお店になるわけでもなさそう。自販機だけにして無人化しちゃったりするのかしら、さてさて・・・。
ところが、4月下旬にふと見ると、おりょっ! それは何?! で、俄然気になりだした。GW明けにどうやら改装が完了して営業再開。あーっと驚くリニューアル~!
Photo (左)2007.5.27、(右)2007.7.8(390*520pix)
改装というのは、「三丁目の夕日」的な、昭和30年代系レトロ化リフォームだった。2Fの戸袋には金鳥とキンチョールの大きなホーロー看板。その他にもいくつかの看板を新規に設置。近所の人の話だと、この調達には結構苦労したんだそうだ。建物の左側には井戸のポンプが飾ってある(機能していないけど)。しょぼかったビニールの庇もやめてしまって、小ぎれいな看板が付いた。庇の亜鉛引き波トタンが銀色に輝いて眩しい。昔風の裸電球の照明も可愛らしい。
自動販売機は片隅だけになり、店内にも入れるようになった。タバココーナーは左のカウンター周辺のみ。右側や奥の方は、木製の作りつけの棚に、レトログッズや駄菓子類がズラッと並ぶ。電球の照明も明るく、なかなか面白い雰囲気。
Photo 2007.5.21
なんでも、代が替わって、息子さん夫婦が一計を案じて、昔風の店構えに換えたのだそうだ。どうなるかと思ってしばらく様子を見ていたが、毎日、多くのお客さんが立ち寄っている。塾帰りのがきんちょだけでなく、中高生やら大学生やら、更には昔を懐かしむ30~40代のお父さん、子供を連れたお母さん。土日などは、結構ひっきりなしにお客さんが出入りしている。
昔の本当の駄菓子屋さんやタバコ屋さんとは、微妙にディテールやボロさ加減が異なるような気がするが、最近のお店にはない風情があって、意外に良いというか面白いのではないだろうか。何よりも、これが映画の中やテーマパークの中での話ではなく、実際の街角にあるところが嬉しい。お店がなくなって塀が続くだけの商店街はなんだか寂しい。一軒だけになったけど、ぎふ屋には続いて欲しいものだ。
#古い建物 中野区 #夕景・夜景 #看板建築