「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

           牧水の「酒のうた」

2007-09-27 05:41:19 | Weblog
  「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしずかに飲むべかりけれ」(牧水) 

歌人の若山牧水がちょうど今ごろの季節に「酒」を歌ったものだ。昨日その牧
水ゆかりの社団法人沼津牧水会から新刊の「牧水 酒のうた」を頂戴した。
牧水が「酒」について詠んだ歌367首が収録されている。この中に亡父との
送別会の席上、牧水が即興に白地の扇子に書いた一首ー
 「わが友を見送るけふのわかれの酒いざ酌めな別れゆかぬと」も載っていた。

亡父は大正10年8月から翌11年2月まで、東京の新聞の記者として沼津に勤
務していたが、その半年間、大学が同窓だったこともあり、牧水の知己をえた。
当時二人とも30代の半ばだったが、カネには恵まれず記者クラブの部屋など
で他の仲間と一緒に沼津駅の駅弁をサカナに呑んでいたようだ。

昨年10月、僕はわが家の書庫に眠っていた牧水の上記扇子を沼津で催された
「碑前祭」の席上、沼津牧水会(林茂樹理事長)に寄贈した。幸いこの歌は「若
山牧水全歌集」に未収録のものだった。亡父はこよなく沼津を愛していた。それ
だけに牧水の扇子の82年ぶりの”里帰り”はよかった。恐らく父も牧水と酌を交
わし、昔話に花を咲かせていることだろう。

「牧水 酒のうた」は「日本ほろよい学会」会長、佐々木幸綱・早稲田大学教授の
解説、牧水の酒にまつわる歌367首と随筆4編、略年譜が掲載されている。
定価500円、沼津牧水記念館売店で取り扱っています。