「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

        占領下電車までストップさせた進駐軍

2011-11-11 06:58:49 | Weblog
66年前、昭和20年11月11日(日)の亡父の日記に"今日は進駐軍のカウボーイ大会が代々木錬兵場(現在の代々木公園)であり、省電(JR)から地下鉄までストップ、都民の足が奪われた”とあった。カウボーイ大会で何故電車を止めたのか判らないが、多分見物のため各地からくる兵隊や家族の輸送のためであろう。占領下といえ随分乱暴な話だ。

その当時日本全国で売りに売れていた本に「日米会話手帖」(小川菊松編科学技術社)がある。記録によると、この本は小川氏が社長をしている科学専門の出版社、誠文堂新光堂の若い社員の発案で、敗戦直後の9月15日に出版された。著者はまったく英語には素人であり、誠文堂新光堂の信用にもかかわるので別の名前で出版した。ところが、時期をえたのだろう。年末までの僅か3か月に300万部が売れるベストセラーとなった。

僕もこの本を買った記憶がある。本の体裁はちゃちだった(タテ9cm、ヨコ12cm)が、内容も当時中学3年の僕がみても期待はずれであった。いわば”日米”を売り物にした”きわもの”だった。年が代った昭和21年になると、ブームは終わってしまった。そのような本だったからであろう。今、この本の現物はほとんど残っていないという。

亡父の11月15日の日記には"月礼。天壌無窮国運の回復を熱願”とある。一方ではカウボーイ大会で電車がとまり、街に進駐軍があふれ、これを目当てにした”日米会話”のきわもの本があふれ、片方では神仏に国運の回復を熱願するという変な時代だった。亡父の日課は毎日"薪わり”と一升瓶にいれた玄米の精米だった。