「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

高倉健 ガン 夏目漱石

2014-11-24 05:50:33 | Weblog
ちょっと三題噺めくが、病床で知った俳優の高倉健の死と、たまたま読んでいた夏目漱石の「明暗」が暫らく、頭から離れなかった。高倉健とは単に銀幕を通じての知り合いだが、生年月日が昭和6年2月16日で全く同じ、しかも血液型まで同じB型である。違うのは”ケンさん”が1m80㎝と偉丈夫で、男の中の男であるのに対して、僕が病身で市井の徒であることぐらいだ。その”ケンさん”が、数年前,前立腺ガンで入院していたことは公表されていなかった。結局、これが引き金になって悪性リンパ腫(ガン)で亡くなった。

病床で夏目漱石の絶筆「明暗」を読んだ。「明暗」は漱石が大正5年、49歳で夭逝した未刊の作品である。「明暗」は主人公の津田(漱石)が病院の手術台の上で、胃潰瘍の手術を受ける場面から始まっている。手術は”28分”で終了、約一寸”(3.3㎝)の腫瘍部分がとりだされている。当時ガンという病名があったかどうか不明だが、胃潰瘍ではなくて、漱石の死因は明らかにガンであった。

漱石は最晩年、「即天去私」という言葉をよく使った。「、広辞苑」によれば”小さな私を去って自然に委ねる”という意味だそうである。一種の悟りの境地である。人生50年の時代とはいえ、今の僕には、まだなかなかこの境地には至らない。高倉健は、死後事務所を通じて”往く道は精進にして終り悔いなし”という辞世をマスメデイアにFAXで送った。時代も違うし、生きてきた道も違う二人だが、色々示唆に富んだ考えさせられる言葉だ。