その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

新日フィル/ 『第九』特別演奏会2012

2012-12-26 00:30:16 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 12月に入ると日本のコンサートホールは第九一色になる。N響のノリトン指揮の第九は魅かれたが、値段が高いし、私の始動も遅くほぼ完売状態だったので、新日本フィルの第九に行くことにした。第九以外の曲目もあるし(最近は演奏曲が第九のみというコンサートが多く、これは甚だ不満である)、台湾人指揮者のリュウ・シャオチャ(呂 紹嘉)という人は初めてだったので、興味を引いた。また、何しろ新日フィルはもう20数年前に私がクラシック音楽聞き始めに頃に、初めて第九の演奏会(初めての年は井上道義指揮、翌年は小澤征爾)に行った思い出の楽団である。その後1,2回定期演奏会に出かけた記憶はあるが、ここ10数年はすっかりご無沙汰だったので、久しぶりのご対面だ。

 会場のオーチャードホールは初めて。一度行きたいと思っていたホールで、こちらも期待していた。ただ、意外と待合エリアは狭く、ホール内もグレー色の無機質な印象で、あまり心躍るホールではなかった。でも、今回は1階席のセンター、前から16列目と言う私としては稀な特等席である。



 第九の前には、レーガーの『7つの宗教的民謡』より「おおいとしきみどり児、やさしきイエス」とベートーベンのエグモント序曲が演奏された。レーガーは合唱のみの曲。栗友会の合唱が美しく、心洗われる歌唱だった。クリスマスシーズンにぴったりの選曲で、嬉しい限り。エグモント序曲にはそのまま連続して演奏。劇的な演奏で、第九への期待を大いに高めてくれるものだった。もっと拍手があっても良いと思ったが、聴衆の心は既に第九に向かっているのか、呼び戻しなしで、休憩に入った。

 さて、その第九だが、この日の演奏は残念ながら私との相性は悪かった。第一、第二楽章は、アンサンブルが揃っておらず、バラバラ感があるように聞こえる。リュウ・シャオチャは節々にアクセントをつけて、ダイナミックに音楽を作ろうとしているようだが、演奏からは曲全体を貫くメッセージが感じられない。第三楽章は何とも美しいが、平板に聞こえる。指揮者は表現したいものがあるのだけど、オケがそれに応えられていない風にとれた。そして、第四楽章も、私としては乗り切れない。合唱は非常にパワフルで声は一杯に出ていたのだけど、どうも全体的なまとまりを欠いて、皆が大きな声を出しているというレベルに止まっているように聞こえた。オケとのバランスも良いとも思えず(前から16列なのに合唱でオケの音が殆ど聞こえない)、合唱もオケも各自が精一杯自分のことだけをやっているようにも受け取れる。日本の第九は合唱の人数が多すぎるというのが率直な感想。前座の合唱、演奏が素晴らしかったので、第九とのギャップは残念だった。ソリスト陣は無難だったが、「これはすごい」というまでには至らない(生意気でスイマセン)。

 ちょっと事前の個人的期待が大きかったので、肩透かしに会った感じ。まあ、年末の第九はお祭りだから、曲つくりとか演奏とか細かに拘るほうが、無粋ということなのだろう。年末に多くの人が第九の実演奏に触れるというのは日本の素晴らしいイベント習慣だと思うし、聞くたびにこの曲は素晴らしいと思う。リュウ・シャオチャの指揮や新日フィルは別の機会に別の曲で聞いてみよう。とりあえず、この日はベートーベン万歳!


12月24日(祝・月)14:00開演 
会場:Bunkauraオーチャードホール 

新日本フィルハーモニー交響楽団

クリスマス コンサート
『第九』特別演奏会2012

■プログラム
レーガー作曲 7つの宗教的民謡 より 『おおいとしきみどり児、やさしきイエス』  
ベートーヴェン作曲 劇音楽『エグモント』 序曲 op.84  
ベートーヴェン作曲 交響曲第9番ニ短調『合唱付き』 op.125  

■出演者
指揮:リュウ・シャオチャ(呂紹嘉) 
ソプラノ:天羽明惠
アルト:加納悦子
テノール:永田峰雄
バリトン:キュウ・ウォン・ハン
合唱:栗友会合唱団
合唱指揮:栗山文昭

コメント (2)
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