IT社会、複雑系をキーワードに、個人の生き方や日本の未来を解説した本です。はじめにには「この類書なき本を最後まで読み終えたとき、あなたのIT観はもちろん、仕事観、世界観が大きく変わっていることを、私は約束したい。」(p6)と自信満々に書いてありますが、私自身には本書によって新しい情報や見方を得るところは多くなく、「残念な本」リスト行きとなりました。
その中で、「尤も」とうなずけたのは、第6章で求められるリーダー像について語った部分です。
「いまや「経営者が最先端の技術を理解しているかどうか」は、企業の未来を左右する大問題。・・・新しい技術が出てきたとき、自分のビジネスにどのような影響があるかを把握して、消費者のニーズを読み取ること」(p137)
「部下からの2次情報しかソースを持たないトップは、市場の変化についていくことができない。一次情報を率先して取りに行き、ディテールについて現場レベル知識を持ちながら、部下から上がってくる二次情報を精査する。これがいまのリーダーに求められる資質なのだ」(p139)
と経営者もディテールを把握することの重要性を説きます。
また、リーダーが哲学を持つことの重要性もこう述べます。
「情報を集めて議論するやり方が通じなくなったIT革命後の世界では、組織をどのようにしたいのか、というリーダーの「決断」が必要不可欠になった。その決断の基準になるのが、リーダーが持つ「哲学」や「主義主張」である。」(pp160-161)
「哲学に加え、それを貫徹する「覚悟」がリーダーには不可欠だ。日本型人事システムにおける「出世競争の勝者としての社長」のように、トップに就任してから「やりたいことを考える」と言っているようでは、いつまでたってもその覚悟を持つことはできない」(p163)
部分部分では首肯できる部分もあるのですが、全体として書籍としての一貫性、ストーリーが弱く、著者が書いた雑誌、Web等での記事をまとめてみましたとでも言うような編集姿勢が透けて見えるのが、残念です。