社会人になりたての新入社員研修で、社内講師である某部長から言われたことを今でも覚えています。「国際感覚を養うために、常日頃、3つの数字を新聞で追うようにしなさい。株価、為替、原油価格の3つです」。そう教わりはしたものの、株価や為替はともかく、原油価格は仕事に殆ど関係ないので、結局、全くフォローもせずに十数年社会人生活を送ってきました。
本書は、その原油ビジネスのダイナミズムを生々しく伝える経済小説です。サハリン沖やイランの油田開発を巡って官僚、商社、NGO、投機家たちが、何を考え、どう動くのかが、ディテール豊富、リアリティ一杯に描かれます。国際経済、国際政治、環境問題など、今起こっている時事ネタが密接に結びつき、スケール感満載の小説です。日頃、エネルギー問題には、消費者として以外あまり縁がない私のような読者にも、覗き見るようにこの世界の一面を知ることができます。新入社員の時にこの小説が世に出ていれば、もっと原油価格にも興味を持ってフォローできただろうに・・・
上下2巻でそれなりのページ数はありますが、長さを感じさせません。勉強になるエンターテイメント小説としてお勧めします。