その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

都響 「作曲家の肖像」シリーズVol.97《スーク》  @東京芸術劇場

2014-07-02 23:30:14 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 今シーズンから都響の「作曲家の肖像」シリーズの会員となりました。定期演奏会はウイークデイに演奏会があるので、なかなか予定の立たないその日暮らしの仕事を持つ私としては、会員になるのはリスクが高いのですが、この「作曲家の肖像」シリーズは週末なのがありがたいです。

 この日はチェコの作曲家スークの作品を同国出身の若手指揮者ヤクブ・フルシャさんが振ります。スークはドヴォルザークの弟子で19世紀後半から20世紀前半に活躍した作曲家です。恥ずかしながら、私は名前こそを聴いたことがあったものの、聴くのは初めてです。

 2曲とも表題のついた音楽ですが、前半の組曲《おとぎ話》は戯曲が存在するのに対して、後半の交響詩《夏の物語》は特定の物語はないようです(プログラムより)。どちらの曲も非常に耳に優しい、聴きやすい曲でしたので、初めてではありましたが、染み透るように耳に馴染む音楽でした。特に、《おとぎ話》の方は、冒頭のチェロ合奏から、独奏ヴァイオリンの美しいメロディが続き、ぐっと引き込まれます。組曲を成す4つの曲が各々個性的で、変化もあり楽しめました。

 前半もそうでしたが、後半も抒情的な音楽です。抒情的過ぎて、途中寝落ちしそうになりましたが、頑張りました。第3楽章のイングリッシュホルン2本の合奏が美しかった。身を乗り出して聴き入ってしまいます。フルシャさんは、自国の作曲家ということで、曲のことを知り尽くしていたのでしょうか?若い方ですが、実に自信たっぷりで、自分のイメージがしっかりと構築されていて、それを都響から紡ぎあげようとする気持ちが指揮姿から伝わります。

 これは音楽によるものなのか?、指揮者によるものなのか?、オーケストラによるものなのか?、ホールによるものなのか?、私には区別がつかないのですが、豊かで、香るようでいて、暖かくかつ爽やかな微風のような「気」がホール内に充満しているような思えたのは、自分が何とも幸せな気持ちでいたかの証です。

 演奏会が終わり会場を出ると、外は傘が全く用を足さない、まさにバケツをひっくり返したような凄い雷雨。仕方なく、ホワイエのソファで30分ほど待機していましたが、むしろこれが演奏会の余韻に浸る素晴らしい時間でした。NHKホールを出て、渋谷の通りを走る宣伝カーの大騒音や原宿のストリートミュージシャンの(悪くは無いのだろうけど、その時に聴きたくはない)音にいつもげんなりさせられている私には、まさに天の恵みでした。



「作曲家の肖像」シリーズVol.97《スーク》
日時:2014年6月29日(日)14:00開演(13:20開場)
場所:東京芸術劇場コンサートホール

指揮/ヤクブ・フルシャ
東京都交響楽団

〈スーク〉
組曲《おとぎ話》op.16
交響詩《夏の物語》op.29



Date: Sun. 29. June 2014, 14:00 (13:20)
Hall: Tokyo Metropolitan Theatre

"Portrait of Composers" Series Vol.97 <Suk>

Jakub HR�・�・A, Conductor

<Suk>
A Fairy Tale Suite, op.16
A Summer's Tale, op.29
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