その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

クリント・イーストウッド監督/ 映画 『父親たちの星条旗』

2014-07-24 19:54:50 | 映画


 昨年のお正月にDVDで見た『硫黄島からの手紙』が日本側の視点で描かれた硫黄島の戦いであるのに対して、本作はその姉妹編としてアメリカ側の視点で硫黄島の戦いを描いた映画です。本作品もクリント・イーストウッドが監督です。

 『硫黄島からの手紙』では、戦場の最前線を舞台に兵士達の生と死、家族愛が真正面から描かれていたのに対して、『父親たちの星条旗』は、戦場だけでなく、銃後のアメリカ本国も舞台となります。硫黄島擂鉢山に星条旗を立てた1枚の報道写真を軸に、その場に居た兵士達が直面していた事実と、戦場から離れた場所でそれを利用する側との間にあるギャップを描くことで、戦争の当事者である兵士や家族、メディア、政治家、メディアの受け手としての国民にとっての戦争が描かれます。

 この映画は、戦争そのものの悲惨さや個々の人間の感情よりも、戦争やメディアの社会性に重点が置かれているように見えます。個人的には『硫黄島からの手紙』の方が強く揺さぶられましたが、こちらも良質の映画です。できれば、『硫黄島からの手紙』と『父親たちの星条旗』は2本セットで見たほうがよいと思いますが、それぞれの作品だけでも十分に重く、考えさせられるところは大きいです。

 太平洋戦争を描いた映画としては、最近では邦画の『永遠の0』を年初めに見たところですが、リアリティ、作品の重みという意味では『硫黄島からの手紙』や『父親たちの星条旗』の方が圧倒的に優れています。『永遠の0』も良くできた映画とは思いますが、この2作と比べてしまうと、お涙ちょうだいの幼い映画に見えてしまうと感じました。まあ製作者の意図が違うのだから、違って当たり前なのでしょうけど、日本人としては残念ですね。



キャスト - 父親たちの星条旗
出演
ライアン・フィリップ (John "Doc" Bradley)
ジェシ・ブラッドフォード (Rene Gagnon)
アダム・ビーチ (Ira Hayes)
バリー・ペッパー (Mike Strank)
John Benjamin Hickey (Keyes Beech)
ジョン・スラッテリー (Bud Gerber)
ポール・ウォーカー (Hank Hansen)
ジェイミー・ベル (Ralph "Iggy" Ignatowski)

スタッフ - 父親たちの星条旗
監督 クリント・イーストウッド
脚本 ウィリアム・ブロイルス・ジュニア
ポール・ハギス
製作 クリント・イーストウッド
スティーヴン・スピルバーグ
ロバート・ロレンツ
ティム・ムーア
撮影 トム・シュテルン
美術 ヘンリー・バムステッド
音楽 クリント・イーストウッド
編集 ジョエル・コックス
衣裳/スタイリスト デボラ・ホッパー
字幕 戸田奈津子
佐藤恵子



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