先週金曜日(4/1)の夕刊に、マイブームの女優、黒木華さんの紹介記事が掲載されていて、岩井俊二監督の新作に出演していることを知った。岩井×黒木なら見ないわけにはいかないということで、その場で翌日の上映をネット予約。
監督と主演以外は知識0で突撃したこともあって、イライラ、ドキドキ、ビックリ、シンミリ、ホッと。感情のジェットコースターを味わった3時間だった。この作品、名作と言えるのかどうかはわからないが、深く胸に残り、余韻を楽しめる映画であったことは間違いない。
正直、前半の一時間弱は苦痛だった。黒木華が演じる主人公皆川七海は、性格は素直だが、あまりにも思慮や自己主張の足りないダメ女。自滅と言われてもしょうがない不幸のスパイラルにはまってしまう。私には、全く感情移入できないどころか、余りの情けなさに苛立ち、腹立たしくなる程だった。見切って退場しようと腰が上がりかけたが、何とか持ちこたえた。
が、その後、物語は持ち直す。Coccoが演じる里中真白との出会いがきっかけで、主人公に新たな人生が展開しはじめる。物語の「承転結」にあたる中盤以降は私としても落ち着いて鑑賞でき、かつラスト30分はグッと感情が高ぶった。前半は長かったが、中盤以降はあっという間に過ぎて、見終わったら三時間が過ぎていた。
この映画、俳優陣の個性的な演技と岩井監督ならではの現実と幻想が入り交じった世界のマッチングが素晴らしい。
黒木華は「幕が上がる」で、個人的に注目度が一気に上がっている(世間的にはもっと前から注目されている)のだが、素朴で自然体の役作りが印象的。主人公の成長物語である本作品で、一人の「普通の」女性の成長を力むことなく演じている。彼女以上にこの役を演じられる女優さんはいないだろう。そして、黒木と同等に映画を支えたのは、怪しげな何でも屋安室を演じる綾野剛と里中真白役のCocco。特に、Coccoが自壊していく様は鬼気迫るものだった。この2人なしには、本作品は成立しなかったことは間違いない。そして最後に登場する里中真白の母珠代を演じるりりィ。凄い存在感と迫力だった。
久し振りに見る岩井監督の長編作品だが、相変わらずの不思議な岩井ワールドが構築されている。幻想的な映像は日々の日常生活シーンでさえ、意味ありげに再構成される。今回は登場人物に沿ってストーリーを追っていくのが精一杯だったけど、何度か見てワンカットワンカットを味わいたい魅力的な映像に溢れている。
好き嫌いが分かれる種類の映画かもしれないが、いろんな人に見てもらって、感想を聞きたい作品だ。
2016年4月2日 @新宿バルト9
スタッフ
監督:岩井俊二
原作:岩井俊二
脚本:岩井俊二
エグゼクティブプロデューサー:杉田成道
プロデューサー:宮川朋之
キャスト
黒木華:皆川七海
綾野剛:安室
Cocco:里中真白
原日出子:鶴岡カヤ子
地曵豪:鶴岡鉄也
和田聰宏:高嶋優人
毬谷友子:皆川晴海
佐生有語:滑
夏目ナナ:恒吉冴子
金田明夫:皆川博徳
りりィ:里中珠代