その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

東京春祭ワーグナー・シリーズvol.7 『ニーベルングの指環』 第2日《ジークフリート》

2016-04-11 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 休日出勤となり危く行けなくなるところでしたが、なんとか強制終了させて上野へGo!暖かくなってきたこともあって、上野界隈はすごい人だかりでした。

 楽しみにしていた甲斐がある鳥肌モノの5時間でした。私自身は「ジークフリート」は全く初めて。なので、比較対象はないのですが、間違いなくワールドクラスのパフォーマンスです。

 まず、歌手陣の素晴らしさに肝を抜かれました。とりわけ、題名役のアンドレアス・シャーガー。ホール内を突き抜けるレーザービームのような鋭く、力強いテノールです。歌声が若々しく、それがジークフリートのイメージにぴったり。5時間(休憩含み)ほぼ出ずっぱりですが、最後の最後まで全く疲れを感じさせず、舞台を大いに盛り上げてくれました。

 1、2幕でジークフリートと対となるミーメ役のゲルハルト・シーゲルも素晴らしかった。柔と剛を併せ持ったテノールのシーゲルの声は、豊かな表現力で、ジークフリートとの掛け合いに彩りと立体感を与えてくれました。昨年の「ワルキューレ」にヴォ―タン役で出てくれたエギルス・シリンスやアルベリヒ役のトマス・コニエチュニー、ファーフナー役のシム・インスンなど他の男性歌手陣も全く文句なしです。

 女性陣も完璧。最終幕で登場したブリュンヒルデ役のエリカ・ズンネガルドは、見た目では年齢不詳ですが、美形で声が若々しい。シャーガーとの掛け合いは、クライマックスにふさわしく緊張感一杯。歌手陣の中では唯一の日本人、清水理恵も美しいソプラノを披露してくれました。

 N響の演奏も盤石です。いつも通りの安定感に加えて、無駄のない、研ぎ澄まされたアンサンブルを聴かせてくれました。個の技も素晴らしいのですが、全体としてのまとまり感が半端なし。今年もライナー・キュッヒル氏がコンサートマスターを務めましたが、この方が居るとオケの音に更に磨きがかかって聴こえます。

 これだけの歌手陣とオケをしっかり束ねて仕上げるのは、名匠ヤノフスキのなせる技なのでしょうね。必要以上にオケを煽ったり、音楽を盛り上げようとすることはなく、音楽は音楽に語らせる。そんなスタンスです。加えての愛想のかけらも無い表情が、日本人好みの職人を感じさせてくれます。カーテンコールでも決して自分は中心に立とうとせず、歌手陣、オケを引き立ててました。

 昨年同様、ステージ後ろのスクリーンにはイメージ映像が投影されました。この映像には批判的な意見もあるようですが、私としては、聴衆のイメージ作りをサポートしてくれるという点において、悪いものではないと思います。

 5時間、あっという間に終わっちゃいました。一年に数度あるかないかの、「クラシック音楽が好きで、俺の人生良いなあ~」とまで思える演奏会でした。ホールの熱狂的な拍手が、それが私だけで無かったことの証だと思います。
 

《雰囲気だけでも・・・》


2016.4.10 [日] 15:00開演(14:00開場)
東京文化会館 大ホール


指揮:マレク・ヤノフスキ
ジークフリート:アンドレアス・シャーガー
ブリュンヒルデ:エリカ・ズンネガルド
さすらい人:エギルス・シリンス
ミーメ:ゲルハルト・シーゲル
アルベリヒ:トマス・コニエチュニー
ファーフナー:シム・インスン
エルダ:ヴィーブケ・レームクール
森の鳥:清水理恵

管弦楽:NHK交響楽団(ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル )
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
映像:田尾下 哲

■曲目
ワーグナー:舞台祝祭劇 『ニーベルングの指環』 第2日 《ジークフリート》
(全3幕/ドイツ語上演)[上演時間:約4時間50分(休憩2回含む)]

Spring Festival in Tokyo -Tokyo Opera Nomori 2016-

Tokyo-HARUSAI Wagner Series vol.7
'Der Ring des Nibelungen' Zweiter Tag "Siegfried"
(Concert Style / With projected images and subtitles)

[ Date / Place ]
April 10 [Sun] at 15:00
Tokyo Bunka Kaikan Main Hall

[ Cast ]
Conductor: Marek Janowski
Siegfried: Andreas Schager
Brünnhilde: Erika Sunnegårdh
Der Wanderer: Egils Silins
Mime: Gerhard Siegel
Alberich: Tomasz Konieczny
Fafner: In-sung Sim
Erda: Wiebke Lehmkuhl
Stimme des Waldvogels: Rie Shimizu
Orchestra: NHK Symphony Orchestra, Tokyo
Musical Preparation: Thomas Lausmann
Video: Tetsu Taoshita

[ Program ]
Wagner: 'Der Ring des Nibelungen' Zweiter Tag "Siegfried"
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