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「帰ってきたヒトラー」(原題はEr ist wieder da 「彼が帰ってきた」)。本物のヒトラーがタイムスリップして、現代ドイツに現れ、ヒトラーのモノマネ芸人として人気を博すシニカル・コメディ。
イギリスの国民投票でEU離脱派が勝利し、米国大統領選挙ではトランプ旋風が起こり、日本でも「昔の「美しい日本」を取り戻そう」を持論とするリーダーの勢いが衰えない。こんな環境下で、この映画を見ると、全く笑うに笑えないし、むしろ背筋が寒くなった。
ところどころにドキュメンタリータッチに一般市民へのインタビューシーンがある。正面から人種差別的な外国人排斥や排他的に過去のドイツを賞賛する声が発せられる。EU離脱を唱える英国人と同様に、少なからずのドイツ人の本音だろう。理念、理想を追うことよりも、目の前の切実な行き詰まり感が大きくなった世界の現実が示される。
「大衆が私を選んだのだ」「私は大衆の心の中にある」とヒトラーに言わせるラストシーンは、前半の大衆の声と呼応して、ドラマと現実が交錯し、否が応でも「今」を問う。歴史の針が、着実に逆向きに進んでいる今、我々は第二のヒトラーを選んでいくのであろうか?
今、まさに観るべき映画だ。