その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

生誕 260 年 モーツァルト・ガラ・コンサート 〜再現1783年ウィーン・ブルク劇場公演〜 @調布音楽祭

2016-06-26 20:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 調布音楽祭の公演モーツァルト・ガラ・コンサートに足を運んだ。

 プログラムが面白い(演目は本ページ末を参照ください)。1783年にモーツァルトがウイーンのブルク劇場で行ったコンサートのプログラムを再現しているという。指揮の鈴木優人氏(「アマデウス・マーツァルトです」と自己紹介し、笑いを取ってた)によると、アマデウス・モーツァルトが父レオパルト・モーツァルトに送った手紙から明らかになったとのこと。交響曲あり、協奏曲(2曲)あり、ピアノ独奏あり、オペラのアリア(4曲)ありのバライティに富んだ、こんなプログラムが普段のコンサートにもあれば良いのにと思わせる魅力的な内容だ(1回のコンサートではとても予算が合わないのだろうが・・・。)。

 その分、時間も長い。休憩2回を含んで、総時間3時間15分。でも、全てモーツァルトの音楽ということもあってか、全く重くないし、もたれることもない。むしろ、目一杯モーツァルトの音楽を楽しませてもらった。

 演奏や歌唱のレベルもとっても高いものだった。アンサンブル・ジェネシスという管弦楽団は初めて聞く名前だったので、興味半分、怖さ半分だったのだけど、管楽器は古楽器を使った本格的なのもので、アンサンブルもお見事。「この人たちってどういう人たちなのか?」と不思議に思いプログラムを良くみたら、メンバーのほとんどがバッハ・コレギウム・ジャパンの奏者だった。さもありなんと納得。

 ピアノにはフォルテピアノが使われて、その音色が実に高貴かつ軽快。小倉貴久子さんのピアノ協奏曲にはうっとり聞き惚れた。会場が収容500名ほどの中ホールだったので、ピアノの音も良く響く。鈴木さん、小倉さん、森下唯さんのピアノ独奏も満喫。「即興による小さなフーガ」を演奏した鈴木氏によると、「ここだけは楽譜がないのだけど、父あての手紙の中にあった「皇帝がいたので小さなフーガを即興で弾いた」という文章を手掛かりに、「再現」してみるというもの。鈴木氏を通じて当時のモーツァルトを想像するだけでも、ウキウキした気分になる。

 独唱陣も私には馴染みのない方だった。が、どの方もしっかりした綺麗なソプラノで、かつ三者三様の違いもあって興味深かった。松井亜希さんは気品と透明感あふれる歌唱で、臼木あいさんはよりドラマティックで力強い。高橋維さんは、丁度その間といったところだろうか。普段は、オケもオペラも最安席で舞台から遠く離れて眺めているのだが、今回は全席同一価格ということで、かなり早くからホール中央の特等席をゲットしていた。そのおかげで、美人揃いの歌手さんが、自分のために歌ってくれているようで、何とも気分が良い。

 舞台の後ろには、クリムトが描いたブルク劇場の客席の絵を大きく映し出し、会場の雰囲気を盛り上げる。こうした演出も気が利いている。

 企画と演奏・歌唱がしっかりかみ合い、充実した、音楽祭ならではの演奏会。最後には、再びハフナーの第4楽章が演奏され、アンコールまで再現。聴衆は皆大喜びだった。帰り際に、私の後方に座っていたかなりお年を召したお婆様が連れの方に「こんなのが聞けたから、もういつ死んでもええわ」とお仰っているのが聞こえてきた。私も当然、満足感一杯で会場を後にした。


《開演前》


生誕 260 年 モーツァルト・ガラ・コンサート
〜再現1783年ウィーン・ブルク劇場公演〜

日時
6月25日(土)14:00~
(13:30開場・180分公演・休憩2回)

場所
くすのきホール

曲目(W. A. モーツァルト)
 交響曲第35番 ニ長調「ハフナー」KV 385
 オペラ《イドメネオ》より「今やあなたが私の父」KV 366 ※1
 ピアノ協奏曲第13番 ハ長調 KV 415 ※2
 《哀れなわたしよ、ここはどこ…あぁ、わたしではない》KV 369 ※1
 セレナード ニ長調 KV 320「ポストホルン」
 ピアノ協奏曲第5番ニ長調 KV 175 ※3
 オペラ《ルーチョ・シッラ》KV 135 から「私はゆく、私は急ぐ」※4
 即興による小さなフーガ ※5
 ロンドニ長調 K 382 ※6
 パイジェッロのオペラ《哲学者気取り》の「めでたし、主よ」による6つの変奏曲 ヘ長調 KV 398 ※2
 グルックのオペラ《思いがけない巡り会い》のアリエッタ「人々はうやうやしく」による10の変奏曲 ト長調 KV 455
 《我が憧れの希望よ…あぁ、汝は知らずいかなる苦しみの》KV 416 ※7

出演
鈴木優人(指揮)
アンサンブル・ジェネシス(管弦楽)
松井亜希※1、臼木あい※4、鈴木維※7(ソプラノ)
小倉貴久子※2、鈴木優人※5、森下唯※6(フォルテピアノ)
コメント (2)
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