やっと調布国際音楽祭に、バッハ・コレギウム・ジャパン(BCH)の演奏に声楽が加わった演目が登場した!ここ数年、せっかくBCHをレジデンス・オーケストラに据えているのだから是非、声楽の入ったプログラムをやってほしいと本ブログで言い続けてきた。それが、聞き入れられたのかどうかはわからないけど、要望が実現したのは何ともうれしいし、ましてやモーツアルトのオペラとあっては狂喜である。しかも、演目はオペラ《バスティアンとバスティエンヌ》と《劇場支配人》という滅多に観られないレアもの。
9割ほどは埋まった(少なくとも1階席は)調布の市民ホールは、終始暖かく、アットホームな雰囲気に包まれた。前半の《バスティアンとバスティエンヌ》はモーツアルトが何と10代前半に作ったという恋愛喜劇。《コジ・ファン・トゥッテ》の原型とも言えるような、若い男女の恋愛の喜怒哀楽が、色彩豊かな音楽に見事に乗っている。天才としか言いようがない。
バスティエンヌ役のジョアン・ランさんの透明感あるソプラノとバスティアン役の櫻田亮のテノールが綺麗にハモッてうっとりする。櫻田亮さんは4月にマタイ受難曲の壮絶なエヴァンゲリスト役がまだ瞼に焼き付いていて、悩める青年バスティアンとのギャップに戸惑ったが、硬軟を使い分けられる器用さに感心した。BCHの演奏は暖かく長閑な空気感を漂わせていて、舞台の世界に引き込まれるよう。
後半の《劇場支配人》も楽しいオペラだった。セリフに地元の調布ネタを適度に織り込み、地元ファンの笑いを誘う。不自然さを全く感じない編集だった。楽譜を持ちながらのパフォーマンスではあったものの、森谷真理さん、中江早希さんと櫻田亮さん、加耒 徹さんらのコメディタッチの演技や歌は微笑ましく、BCHの楽団員さんも一部ストーリーに参加するひねりも織り込まれている。さらに、支配人を演じた鈴木優人さんのソフトな名優ぶりもなかなかで、みなさん実に芸達者であった。
オペラとかクラシックと言うとなんか堅苦しいイメージが常にまとわりつくが、この演奏会は知識もがんちくも要らない、そのままで音楽の楽しさが存分に満ちていた。
2曲とも、セリフは日本語、歌は原語(日本語字幕付き)だったが、全く違和感なし。簡易なオペラであるので、セットは無くても不満もないし、むしろ照明による軽度の演出が無機質な市民ホールの雰囲気をカバーしていたと思う。
3年間待ち続けた声楽付のBCH演奏会。待ち続けた末の期待をさらに上回る演奏会であった。
日時
7月1日(日)17:00
場所
グリーンホール 大ホール
出演
鈴木優人(指揮)
ジョアン・ラン(ソプラノ)
森谷真理(ソプラノ)
中江早希(ソプラノ)
櫻田亮(テノール)
加耒 徹(バス)
バッハ・コレギウム・ジャパン(管弦楽)
曲目
モーツァルト:オペラ《バスティアンとバスティエンヌ》KV 50
モーツァルト:音楽付き喜劇《劇場支配人》KV 486
備考
字幕付公演/演奏会形式
Bach Collegium Japan Masato Suzuki, Conductor Mozart: Der Schauspieldirektor
Date
Sunday, July 1 at 17:00
Place
Chofu City Green Hall, Large Hall
出演
Masato Suzuki, Conductor
Joanne Lunn, Soprano
Mari Moriya, Soprano
Saki Nakae, Soprano
Makoto Sakurada, Tenor
Toru Kaku, Bass
Bach Collegium Japan, Orchestra
Programs
Wolfgang Amadeus Mozart: Der Schauspieldirektor, KV 486
Wolfgang Amadeus Mozart: Bastien und Bastienne, KV 50