その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

行けて良かった! ダ・ヴィンチ音楽祭 in 川口 vol.1 オペラ「オルフェオ物語」

2019-08-16 07:40:28 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

 一度聴きたいと思っていたモンテヴェルディのオペラ「オルフェオ」、そのチケットを購入したつもりだった。公演前日になってHPをチェックしたら、モンテヴェルディの文字がどこにもない。代わりに、レオナルド・ダ・ヴィンチがプロデュースという良く分からない表記。濱田芳通さんなる音楽家・指揮者も、アントネッロという楽団も失礼ながら全くの初耳。これは、我ながら大チョンボやらかしたなあと思いつつも、せっかく購入したチケットでもあり、埼玉県川口市まで出かけました。

到着すると、まずは川口市の総合文化会館の音楽ホールがあまりにも立派なのでびっくり。収容は500+αほどでしょうか。中規模ながらも木の壁で囲まれ、ステージ奥には立派なパイプオルガンも設置されています。

そして、公演は冒頭から終わりまで目が離せない素晴らしいものでした。まず企画がユニークです。楽譜が残ってないのと、もともと当時、音楽は即興的に演奏されていたという事情なので、「オペラ」の完全な復元は困難なわけです。なので、音楽監督の濱田氏は「ポリティアーノの台本をベースにしたものに従って、ダ・ヴィンチの生きた時代と重なるレパートリーに、替え歌としてテキストを当てはめながら構成」(プログラム「演奏ノート」)します。正直、素人の私にはその作業の困難さや信頼性の判断は全くできませんが、想像するに相当大変な努力であることは容易に分かるし、そうした試み自体がチャレンジングで素晴らしいと思います。

演奏は、古楽器を使っているのですが、奏でられる音楽は不思議なほど全く古さを感じず瑞々しいです。これらがルネッサンス期の音楽とは信じられない活力ある新鮮な音楽に聴こえました。一方で、アントネッロによる古楽器から発せられる音は何とも平和で心休まる響き。音楽に浸るという感覚とはこういうことなのだろうと感じました。

歌手陣の歌唱も素晴らしかったです。大きくも小さすぎもしないホールが、自然な歌唱を引き出しているのか、どの歌手の歌もホールの隅々にまだ染みとおる美しい声を聴かせてくれました。個人的に特に感銘を受けたのは、前半の半ばで歌われた妖精ドリアスたちの重唱。清らかで、透明感あふれる歌声は天上のもののようでした。

舞台は、管弦楽の皆さんと歌手が混在する中で、中央に小さな岩山が置かれて、その開閉で現世と冥界が区別されます。ステージ奥のパイプオルガンをバックにした照明の使い方も効果的で、演奏と歌と物語を魅せるのに徹した良い演出だと感じました。

終演後の拍手も実に大きく、暖かいもので、聴衆みなの感想、思いが込められたものでした。

この演奏会は、お盆の時期を4日間通して、ダ・ヴィンチの生誕500年を記念しての様々な公演が用意されている一部です。もっときちっと調べていれば、他の演奏会や講演も聞きに来たのに、私の情報収集の甘さを後悔と渋々でかけた自分に反省。というよりも、勘違いで偶然購入したにも関わらず、素晴らしい演奏会に出合えた自分の幸運に感謝でした。

ダ・ヴィンチ音楽祭 in 川口 vol.1 オペラ「オルフェオ物語」
本邦初演原語上演(字幕付)
2019/8/14(水)18:30 (開場:17:45
川口総合文化センター・リリア
プロデュース レオナルド・ダ・ヴィンチ&アントネッロ
台本:アンジェロ・ボリツィアーノ
指揮:濱田芳通 
演出:中村敬一 
管弦楽:アントネッロ

オルフェオ:坂下忠弘
アリステオ:上杉清仁 
ティルシ:中嶋克彦
ブルート:彌勒忠史 
エウリディーチェ:阿部雅子
プロゼルビナ:中山美紀 
スラブ系羊飼い:赤地カレン
ニンファ:乙顔有希 
バッカスの巫女:細岡ゆき

〈休憩中〉

<開演前のホール近くから撮った夕空>

コメント (2)
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