シリーズ「声 議論, 正論, 極論, 批判, 対話...の物語」の第2弾。ニューヨークのマンションのロビーを舞台に、とある殺人事件を巡って、マンションの警備員2名とニューヨーク市警の警察官2名(一人は見習いの婦人警官の卵)の4名により繰り広げられる会話劇。第1弾の「アンチポデス」に続いて、完成度高く、笑いの中にいろんなことを考えさせられた芝居であった。
テーマは「正義の捉え方」「人種・性などによる差別」「コミュニケーションの相互作用性」など。観る人によって様々に取れるだろう。
私個人は、「正義」や「差別」観点よりも、「コミュニケーション」にこの芝居の面白さがあると感じた。チャラ男ジェフ(中村蒼)が、一見、相手を顧みず好き勝手に話してコミュニケーションが成立してないように見えながらも、聴くことで相手の話を受け止めていて、会話により相互理解を深めている。欠点だらけのジェフであるが、オープンであること、正直であること、相手を理解しようとすることが、人の関係性を大きく変える力を持っていることに気づかされれる。
4名で3時間近くを喋り倒す芝居だが、役者さん夫々が、役柄に完全に入り込み、夫々の際立ったキャラを演じきっていた。それが、舞台の安定感と集中度をぐっと高めていた。中でも、ジェフの成長物語とも取れる本作において、中村蒼の熱演は圧巻。しっかりとした軸を作っていたと思った。
台本はアメリカっぽく、ストレートで分かりやすく、テーマも明示的。ロビーの一場面芝居を様々な角度で見せる演出も良く出来ていると感心した。
いよいよ来月、シリーズ第3作。こちらも見に行くつもり。
ロビー・ヒーロー
Lobby Hero
日本初演
2022年 5月13日[金]
予定上演時間:2時間55分(1幕:85分 休憩:15分 2幕:75分)
スタッフ
【作】ケネス・ロナーガン
【翻訳】浦辺千鶴
【演出】桑原裕子
【美術】田中敏恵
【照明】宮野和夫
【音響】島貫 聡
【衣裳】半田悦子
【ヘアメイク】林みゆき
【演出助手】和田沙緒理
【舞台監督】野口 毅
キャスト
中村 蒼、岡本 玲、板橋駿谷、瑞木健太郎