サイモン・ラトルとバイエルン放送響の来日公演に足を運びました。今年、最初で最後の外オケ演奏会です。
今回はチケット取りでガチャ外れ。N響会員ということで先行販売に申し込んだものの、割り当てられた席は2階の左サイド最深部。奥まって、低い天井が覆いかぶさるこのエリアは、私が最も苦手とするところ。こんなんなら一般販売日に3階席奥でも自ら選んで購入した方が良かったと、購入時は強く後悔しました。当日となったこの日は、気を取り直して席に着きましたが、う~む。2階左サイド前方はまとまった空席がありましたが、会場はほぼ満員。前日のサントリーホールが相当の名演だったようなので、その熱気をそのまま持ち込んでいるのかと思うような、期待感に溢れる雰囲気が感じられました。
冒頭はバートウイッスルの5分程度の小品「サイモンへの贈り物 2018」。管楽器のみの編成で、変化にとんだ現代曲は私の理解を超えていてコメント難しい。
続いて、この日のメインのマーラー交響曲第7番。個人的には、この曲、マーラーの交響曲の中では断トツで聴いてない曲です。捉えどころなく、取っ散らかって、分裂症的な印象がとっつきにくく、定期演奏会のプログラムに入ってない限りは聴いてこなかった音楽。なので、実演経験もジンメルさんとN響定期で一度聴いただけ。
今回の最大の収穫は、ラトルさんとバイエルン放送響のおかけで、この音楽の多彩さやつくりの魅力に気づいたことでした。楽章ごとの詳細なコメントはできないのですが、ラトルさんが紡ぐ音楽は、緻密さと豪快さ、論理性と感情、強さと弱さ、形式と中身などなどをすべてを呑み込んだ仕立てに感じられました。「取っ散らかって」と思っていたのは「こういう形式なんだ」とうなずいたり、金管の爆発的な響きと弦楽器の耳をそばだてる繊細な弱音、構造的な作りの中に感情が一杯に詰め込まれている感覚などなど、表現の幅広さに驚きの連続。一音たりとも聴き逃せない、そんな緊張感が自らに課せられた1時間20分余りでした。
個人的には第4楽章の「夜の歌」の優しく、デリケートさが極上でした。左サイドであったためか、ヴァイオリンの後ろに位置したギターとマンダリンの細い音もしっかりと聞こえてきて、うっとり。ここだけはこの席で良かったと思いました(N響定期の3階席右サイドの定位置では届かなかったんでは)。すべてを洗い流すような第5楽章のオケ総出での盛り上がりは、このオーケストラのパワーが炸裂。地響きが感じられるほど。各プレイヤーの強い自己主張をまとめ上げて、昇華させるラトルさんの剛腕も更に引き立ちます。日本のオケもとっても好きですが、この地力の違いは認めざるを得ず、毎度思うのですが、サッカーのプレミアリーグを生で見た時の、Jリーグとのショッキングな違いと感覚は似ています。
終演後は大きな拍手に包まれましたが、ここでも不満は2階サイド席。精一杯拍手しますが、なんかホール全体の熱狂の隣の別室にいるような感覚で、聴衆の一員としての一体感に置いてきぼりにされている感じ。演奏中は、思いのほか音は飛んできていたものの、う~ん、この疎外感ってことは演奏もやっぱりデグレして聴こえていたのではと疑心暗鬼も募りました。
いずれにしても名演は名演。お財布を気にしながらも、1年に1回はやはり外の世界に触れるべきだなあ~と改めて思った演奏会でした。
NHK音楽祭 バイエルン放送響楽団
Bavarian Radio Symphony Ochestra
2024年11月28日(木) 19:00開演 (18:00開場)
指揮:サイモン・ラトル (Sir Simon Rattle)
バートウィッスル/サイモンへの贈り物 2018
Harrison Birtwistle: Donum Simon MMXVIII
マーラー/交響曲第7番 ホ短調 「夜の歌」
Gustav Mahler: Symphony No.7 in E minor "Song of the night"