ロイヤル・オペラ・ハウスにカルメンを見に行ってきました。カルメンは、その美しい音楽、登場人物たちの個性の強さという点で、最も好きなオペラの一つです。今日は、今をときめくガランチャとアラーニャの共演ということで、とっても楽しみにしていました。チケットも、私としては清水の舞台から飛び降りたつもりで買った170ポンド席です(それだけ出しても、バルコニー(3階)席最前列なんですが・・・)。
終わっての印象は、こんなに配役が皆、はまり役。音楽もさることながら、舞台や演技に目が行った舞台でした。
まずは、タイトルのカルメンを演じたエリーナ・ガランチャとその恋人(途中で捨てられますが)ドン・ホセを演じたロベルト・アラーニャ。素晴らしい存在感でした。
ガランチャはまさに、その野性味、美しさがカルメンのイメージそのもの。第1幕で舞台に登場するや否や、完全に舞台を支配した感じでした。歌のほうは、第1幕は、今日は調子が悪いのかなあと思ったのですが、場面が進むにつれて、美しくと迫力と透明感を併せ持ったソプラノを聞かせてくれました。
アラーニャは、女性ファンが多いのがうなずけます。甘いマスクに、美しくかつホール全体に響き渡るテノール。もてないわけがありません。今日も最初から最後まで、ガランチャを凌ぐほどの存在感で、カルメンに翻弄されるホセを演じ、歌っていました。特に、第4幕の最終場面、カルメンに復縁を迫る、その決死の演技は、男性の私でさえ、もう双眼鏡でかぶりつきで、じっーと、追わせる迫真の演技で、背筋が寒くなるほどでした。
脇役陣も見事でした。闘牛士エスカミーリョ役のIldebrando D'Arcangeloはいかにも闘牛士という背格好で、張りのあるバリトンを聴かせてくれました。
また、ホセを慕うミカエラ役のLiping Zhangも、カルメンと対極にある「待つ女性」を演じ、ミカエラのアリアを初めとした美しい歌声を聞かせてくれました。
更に、ジプシー役の中村絵里さん。なんで、この人はこんなにジプシーが似合うのかと不思議ななるぐらい、はまっていたし、なりきってましたね。
最後に、今日はコーラスが素晴らしかったと思います。コーラスが良いと本当に舞台全体が絞まり、かつ盛り上がります。第2幕のジプシーの歌なんかは素晴らしかったです。
オーケストラも、第3幕への間奏曲が自分にはちょっとあまりにもスローテンポすぎたこと以外は、良かったと思います。特に、第1幕への前奏曲なんかはメリハリの利いた演奏でした。
ただ、自分でちょっと気になったのは、良かったところだらけなのに、何故か、圧倒的な感動に襲われた舞台ではありませんでした。期待値が高すぎたのか、今週の仕事の疲れのためか?う~ん、みんな良かったのに、胸が熱くなるような感動には至らなかったというのが、不思議なのですが、少し残念でした。良い舞台であったことは間違いないのですが・・・。オペラは難しいなあ~。
Carmen
Saturday, October 10 7:00 PM
Credits
Composer:Georges Bizet
Director: Francesca Zambello
Designs: Tanya McCallin
Lighting: Paule Constable
Choreography: Arthur Pita
Fight Director: Mike Loades
Performers
Conductor: Bertrand de Billy
Carmen: Elina Garanca
Don José: Roberto Alagna
Escamillo: Ildebrando D'Arcangelo
Micaëla: Liping Zhang
Moralès: Changhan Lim§
Zuniga: Henry Waddington
Frasquita: Eri Nakamura§
Mercédès: Louise Innes
Le Dancaïre: Adrian Clarke
Le Remendado: Vincent Ordonneau