★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

一千一秒物語

2015年05月12日 19時48分54秒 | 徒然(つれづれ)
「一千一秒物語」を再読。
 稲垣足穂の処女小説で最高傑作、といっても、どちらかというとマニアックな部類に入るのかな。
 学生時代に読んで、目から鱗の印象を受けた一冊だ。
 いわゆる文学小説とも私小説とも趣を異にするトンデモ小説だ。

 当時は安部公房あたりを先端と思っていたが、この本は、はるかにそれを超えていた。
 70編からなる掌編集で、星をひろった話とか、お月さんとけんかした話とか、箒星を獲りに行った話とか、掌編のタイトルだけ並べると小学生向けの童話集みたいで、実際に文章も小学生にもわかるような簡潔明瞭なものだ。
 
 しかし、そこは巨匠、シンプルな言葉の中に独自の世界観が溢れているのだ。
 シュールでノスタルジックで、モダンでクールでファンタジックなのだ。
 小説の常識の範疇外のヘンテコ話だ。
 それでいて、思考の襞を柔らかに刺激しながら、心の中に染み込んでくるのだ。
 こんな小説が大正時代に書かれたということも驚き桃の木だ。
コメント
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