今日はずっと積みっぱなしだったタイヤチェーンを降ろして片づけました。さすがに桜も満開となっては使う機会が訪れることはないでしょう。朝はまだ寒いときもあるので部屋のストーブは置いてありますけど、いよいよ本格的な春がきて、やがて初夏へと移る頃には、これも物置にしまい込むことになります。暖かいというのは単純に気持ちがいいものです。
さて、そんな中、1冊の本を読み終えました。マリみて新刊「くもりガラスの向こう側」と一緒に買った文庫本で、「宇宙のランデヴー」アーサー・C・クラーク著 ハヤカワ文庫 です。マリみての新刊を探し当てたあと、何気なく本屋さんの中を徘徊するうちに、平積みになっていたのが目に入りました。まず気になったのは、クラークの本が平積みになっているという事でした。クラークというと、1960年代にアイザックアシモフやロバート・A・ハインラインとともに御三家としてサイエンス・フィクションの黄金時代を築き上げた方で、「幼年期の終わり」や「2001年宇宙の旅」など、私も学生の頃はむさぼるように読んだものでした。そんな前世紀のいわば古典に属する作家の本が、新刊と同じく平積みになっているというのは、新鮮な驚きを覚えさせてくれる事件です。そんなわけで、それほど中身も確かめることなく、そのまま連れて帰ることにしたのでした。結局家に帰ってから確かめましたら、中身自体は1973年に書かれた小説で、ハヤカワ文庫収録も1985年と21年前(なんと、ドリームハンター麗夢が世に出た時と同じ……、クラークとは何の関係もありませんけど(笑))という結構古い本でした。平積みになっていたのは、今年新しい増し刷り(18刷)が出たためだったのです。
こうしてマリみてとクラークを併読してきたわけですが、我ながらなんて嗜好をしているのか、と自分でも不思議な点はさておいて、読んで第一感は何とも懐かしい感じがいたしました。お話の内容は、作者得意の宇宙異文明遭遇譚です。太陽系内に人類が広がる2130年、外宇宙から直径20キロ、長さ40キロ、外郭厚1000メートル、自転周期4分という巨大な金属筒が飛んできます。異星人の手になるその物体にファースト・コンタクトの期待を込めて一隻の宇宙船が派遣され、内部の探検に乗り出します。お話はほとんどすべてがこの探査チームの活動を追って、進められます。艦長が中心となって幾人かのスタッフがお話を進めていく様は、往年の「スタートレック」などのドラマのような雰囲気でそれもまた懐かしさを覚える一因なのだと思われますが、他にも言葉の端々にちりばめられた軽妙な語り口や全体にみなぎる畏れと緊張感。しっかりした科学考証。どれをとっても間違いなくクラークの筆になるものに違いなく、それがぴたりと私の懐古的感情にはまったのです。といって中身に古びた様子は伺えません。今でも十分楽しめましたし、ヒューゴー賞とネビュラ賞同時受賞作というのも伊達ではないと思います。
玉に瑕は、どうも薄っぺらに見えがちな登場人物や世界状況の設定で、惑星連合なる組織の会議のシーンは今となってはかなり幼稚に見えてしまいます。この点については既に発表当時から指摘されていたと後書きにもありましたが、クラーク自身の社会や政治に対する考え方や時代的制約を考えると、致し方ない点もあるのでしょう。それにそもそもそういう社会情勢を描くことを目的としたものではなく、あくまでも未知なるものに準備もままならないまま果敢にも挑んでいく人間達の姿を描く物語なのですから、それを念頭において読めば、十分堪能することができると思います。
ところで懐かしさついでに調べてみて驚いたのですが、クラークってまだご健在だったんですね。それも現役でちゃんと小説も書いているんだとか。正直ただ一言、「スゴイ」と思ってしまいました。
さて、そんな中、1冊の本を読み終えました。マリみて新刊「くもりガラスの向こう側」と一緒に買った文庫本で、「宇宙のランデヴー」アーサー・C・クラーク著 ハヤカワ文庫 です。マリみての新刊を探し当てたあと、何気なく本屋さんの中を徘徊するうちに、平積みになっていたのが目に入りました。まず気になったのは、クラークの本が平積みになっているという事でした。クラークというと、1960年代にアイザックアシモフやロバート・A・ハインラインとともに御三家としてサイエンス・フィクションの黄金時代を築き上げた方で、「幼年期の終わり」や「2001年宇宙の旅」など、私も学生の頃はむさぼるように読んだものでした。そんな前世紀のいわば古典に属する作家の本が、新刊と同じく平積みになっているというのは、新鮮な驚きを覚えさせてくれる事件です。そんなわけで、それほど中身も確かめることなく、そのまま連れて帰ることにしたのでした。結局家に帰ってから確かめましたら、中身自体は1973年に書かれた小説で、ハヤカワ文庫収録も1985年と21年前(なんと、ドリームハンター麗夢が世に出た時と同じ……、クラークとは何の関係もありませんけど(笑))という結構古い本でした。平積みになっていたのは、今年新しい増し刷り(18刷)が出たためだったのです。
こうしてマリみてとクラークを併読してきたわけですが、我ながらなんて嗜好をしているのか、と自分でも不思議な点はさておいて、読んで第一感は何とも懐かしい感じがいたしました。お話の内容は、作者得意の宇宙異文明遭遇譚です。太陽系内に人類が広がる2130年、外宇宙から直径20キロ、長さ40キロ、外郭厚1000メートル、自転周期4分という巨大な金属筒が飛んできます。異星人の手になるその物体にファースト・コンタクトの期待を込めて一隻の宇宙船が派遣され、内部の探検に乗り出します。お話はほとんどすべてがこの探査チームの活動を追って、進められます。艦長が中心となって幾人かのスタッフがお話を進めていく様は、往年の「スタートレック」などのドラマのような雰囲気でそれもまた懐かしさを覚える一因なのだと思われますが、他にも言葉の端々にちりばめられた軽妙な語り口や全体にみなぎる畏れと緊張感。しっかりした科学考証。どれをとっても間違いなくクラークの筆になるものに違いなく、それがぴたりと私の懐古的感情にはまったのです。といって中身に古びた様子は伺えません。今でも十分楽しめましたし、ヒューゴー賞とネビュラ賞同時受賞作というのも伊達ではないと思います。
玉に瑕は、どうも薄っぺらに見えがちな登場人物や世界状況の設定で、惑星連合なる組織の会議のシーンは今となってはかなり幼稚に見えてしまいます。この点については既に発表当時から指摘されていたと後書きにもありましたが、クラーク自身の社会や政治に対する考え方や時代的制約を考えると、致し方ない点もあるのでしょう。それにそもそもそういう社会情勢を描くことを目的としたものではなく、あくまでも未知なるものに準備もままならないまま果敢にも挑んでいく人間達の姿を描く物語なのですから、それを念頭において読めば、十分堪能することができると思います。
ところで懐かしさついでに調べてみて驚いたのですが、クラークってまだご健在だったんですね。それも現役でちゃんと小説も書いているんだとか。正直ただ一言、「スゴイ」と思ってしまいました。