スクロヴァチェフスキ&読響の演奏会。スクロヴァチェフスキは2年前に読響の常任指揮者に就任して以来、ブルックナーの初期交響曲を連続してとりあげていて、すでに第2番、第0番をふっている。今回は第1番。ほかに習作の交響曲があるが、これは対象外のようだ。
この日のプログラムは次のとおりだった。
(1)ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
(2)モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番(ピアノ独奏:アンヌ・ケフェレック)
(3)ブルックナー:交響曲第1番
ブラームスは、各変奏のテクスチュアーのちがいに神経が行き届いた演奏。途中のトゥッティで音がやや重く感じられる瞬間があったが、すぐに持ち直した。終曲では低弦のテーマが終始くっきりと保持され、パッサカリアの形式感が明瞭に浮かび上がってきた。
モーツァルトは、一点の曇りもない澄み切った演奏。私は現世の苦しみから解放された魂を垣間見るような気がした。
オーケストラは第1ヴァイオリンから順に8-6-4-2-1という小編成だが、張りのある音がでていて、小編成であることを感じさせない。第1楽章の提示部の終わり、展開部に移る前では、何かを問いかけるようなフレージングがきかれ、これはもう絶妙というしかない。
ピアノのケフェレックも、音の明るさ、打鍵の軽さ、リズムの均質性、どれをとっても申し分なく、無垢な世界に遊ぶような演奏。第3楽章の展開部にでてくる長めのソロのパッセージに大きなアゴーギクをつけ、モーツァルトの心情の一瞬の動揺を感じさせた。私はハッとして、今までこういう演奏をしたピアニストがいただろうかと思った。
ブルックナーは、引き締まった筋肉質の演奏で、そこから、質朴で、かつ剛毅な精神が立ち上がってきた。ときどきブルックナーの演奏では、極限まで拡大した‘巨匠’風の演奏があるが、真のブルックナーの精神は、案外、このようなものかもしれないと思った。
なお、あらためていうまでもないだろうが、この曲にはリンツ版とウィーン版の2種類の版があり、その大きなちがいは第4楽章コーダの部分で、リンツ版はインテンポで押していくが、ウィーン版はどんどんテンポを落としていく。この日の演奏はリンツ版を基本としていたが、プログラムの解説によれば、「今まで読売日響と共演したいくつものブルックナー演奏同様、作曲家でもある指揮者スクロヴァチェフスキが自身で加筆したスコアが使われると思います」とのことだった。
私はこれでスクロヴァチェフスキ&読響によるブルックナーの初期交響曲をすべてきくことができた。私にとっては貴重な財産になった。
(2009.03.09.サントリーホール)
この日のプログラムは次のとおりだった。
(1)ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
(2)モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番(ピアノ独奏:アンヌ・ケフェレック)
(3)ブルックナー:交響曲第1番
ブラームスは、各変奏のテクスチュアーのちがいに神経が行き届いた演奏。途中のトゥッティで音がやや重く感じられる瞬間があったが、すぐに持ち直した。終曲では低弦のテーマが終始くっきりと保持され、パッサカリアの形式感が明瞭に浮かび上がってきた。
モーツァルトは、一点の曇りもない澄み切った演奏。私は現世の苦しみから解放された魂を垣間見るような気がした。
オーケストラは第1ヴァイオリンから順に8-6-4-2-1という小編成だが、張りのある音がでていて、小編成であることを感じさせない。第1楽章の提示部の終わり、展開部に移る前では、何かを問いかけるようなフレージングがきかれ、これはもう絶妙というしかない。
ピアノのケフェレックも、音の明るさ、打鍵の軽さ、リズムの均質性、どれをとっても申し分なく、無垢な世界に遊ぶような演奏。第3楽章の展開部にでてくる長めのソロのパッセージに大きなアゴーギクをつけ、モーツァルトの心情の一瞬の動揺を感じさせた。私はハッとして、今までこういう演奏をしたピアニストがいただろうかと思った。
ブルックナーは、引き締まった筋肉質の演奏で、そこから、質朴で、かつ剛毅な精神が立ち上がってきた。ときどきブルックナーの演奏では、極限まで拡大した‘巨匠’風の演奏があるが、真のブルックナーの精神は、案外、このようなものかもしれないと思った。
なお、あらためていうまでもないだろうが、この曲にはリンツ版とウィーン版の2種類の版があり、その大きなちがいは第4楽章コーダの部分で、リンツ版はインテンポで押していくが、ウィーン版はどんどんテンポを落としていく。この日の演奏はリンツ版を基本としていたが、プログラムの解説によれば、「今まで読売日響と共演したいくつものブルックナー演奏同様、作曲家でもある指揮者スクロヴァチェフスキが自身で加筆したスコアが使われると思います」とのことだった。
私はこれでスクロヴァチェフスキ&読響によるブルックナーの初期交響曲をすべてきくことができた。私にとっては貴重な財産になった。
(2009.03.09.サントリーホール)