Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラウダ・コンチェルタータ

2010年06月26日 | 音楽
 日本フィルの6月定期は井上道義さんを指揮者に迎えて次のプログラム。
(1)伊福部昭:マリンバと管弦楽のためのラウダ・コンチェルタータ(マリンバ独奏:安倍圭子)
(2)ストラヴィンスキー:ハ調の交響曲
(3)ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)

 「ラウダ・コンチェルタータ」が再びきけるとは!というのが実感。私はこの曲を1990年4月の新星日本交響楽団の定期できいた。指揮は山田一雄、マリンバ独奏は今回と同じ安倍圭子さん。新星日響はその直後に初のヨーロッパ公演を控えていて、現地で演奏する曲目のお披露目だった。その演奏は今でも鮮明に覚えている。サントリーホールの空間をみたす巨大な演奏だった。私は魂が震えるような感じがした。

 この曲は新星日響の創立10周年の委嘱作品。初演は1979年9月の第36回定期で、指揮もマリンバ独奏も同じ顔ぶれだった。私はそのときはきいていないが、ライヴ録音のCDがあって、一時期毎日のようにきいていたことがある。生できいたのは前述の1990年4月が初めて。CDできくより緻密な演奏だと思った。マリンバ・パートが安倍圭子さんによって手をくわえられているとのことだった。

 ヨーロッパ公演ではベルリンのシャウシュピールハウス(現在のコンツェルトハウス)での演奏が、聴衆に大きなどよめきと感動を呼んだとされている。その演奏がライヴ録音のCDになっている。私は先ほど久しぶりに引っ張り出してきいてみた。たしかに盛んなブラヴォーが飛んでいる。演奏もたいへんな名演だ。

 新星日響は2001年に東京フィルと合併するかたちで消滅した。私は東京フィルの定期会員に移行したが、いつまでも寂しさが解消せず、数年後に退会した。その寂しさは今でも残っている。オーケストラの消滅というのは、こたえるものだ。

 今回の再演はまったく予想外だった。安倍圭子さんがご健在で、今回もソリストをつとめることは嬉しい驚きだった。指揮が井上道義さんであることも、山田一雄亡き後はこの人しかいない!という感じだ。

 安倍さんは、20年前とは同じではなかったかもしれないが、最後の熱狂的に同じ音型を叩き続ける部分をきいていて、私は感動した。年齢を重ねてきたその身体から噴出する生命のほとばしりに撃たれた、といったらよいだろうか。
 アンコールに自作のマリンバ独奏曲を演奏してくれた。柔らかいマレットと木製の柄の部分を使い分けて、2種類の音色で構成された曲だった。

 井上道義さん指揮の日本フィルも好調だった。ストラヴィンスキーのパロディー精神あふれる「ハ調の交響曲」があれほどの好演になるとは思っていなかった。
(2010.6.25.サントリーホール)
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