Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ETV特集「放射能汚染地図」

2011年05月16日 | 身辺雑記
 わたしは、普段、テレビを見ないのですが、昨日(5月15日)は興味をひかれる番組があったので、押し入れからテレビを引っ張りだしました。ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図~福島原発事故から2か月~」という番組です。ご覧になったかたも多いのではないでしょうか。NHKの公式ツイッターを見たら、再放送を望む声が多数よせられていました。

 この番組は、国の機関(独立行政法人)の元研究員、木村真三氏が、放射能汚染を計測する姿を追っています。同氏は、原発事故直後、所属の機関から「独自調査をしないように」といわれたそうです。いかにもありそうな話です。同氏は辞表を出しました。

 同氏の動機は、東海村の事故のときに、初動調査が遅れたという反省でした。今回は同じ失敗をしてはならない、現場に行って、しっかり計測しなくてはならない、というのがその動機でした。

 木村氏の車が福島原発に近づくにつれて、放射線量が上がっていきます。息詰まるような瞬間です。放射線量は、直線的に上がるのではなく、ときどき下がることがあります。場所によってムラがあるのが特徴だそうです。

 放射線量がとくに高い場所を「ホットスポット」というそうです。同氏の計測中にそれが見つかりました。浪江町の赤宇木(あこうぎ)という地区です。そこは30キロ圏からわずかに外れているにもかかわらず、異常値を示しました。同地区には避難民がいました。木村氏は計測結果を話しました。戸惑いを隠せない避難民たち。やがて退去を決めました。国からも、東電からも、そして自治体からも、なんの情報もないなかで、同氏だけがその地区の危険性を伝えたわけです。

 全体は、静かな、抑えたトーンで一貫しています。けっして声高に主張することはありません。まるで息をひそめるようにして、生活を破壊された多くの人々の無念さを、淡々と描きます。

 番組の最後、ある夫婦が、飼い犬と飼い猫に餌をやるために、避難所から自宅に戻ります。しっぽを振って大喜びの犬。夫婦は、長居はできないので、すぐに立ち去ろうとします。犬は、鎖をはずして、追ってきます。車は、それを振り払おうと、スピードを上げます。全力で走る犬。わたしはもう見ていられませんでした。

 この番組を通して、福島の「今」がよくわかりました。原発事故を考える原点のようなものが(わたしのなかに)できた気がします。
コメント (3)
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