Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラ・フォル・ジュルネ

2011年05月06日 | 音楽
 今年のラ・フォル・ジュルネは、東日本大震災と原発事故のために大揺れに揺れたが、ともかく規模を縮小して開催することができた。

 わたしは当初の発売で3公演のチケットを入手したが、そのうちの2公演はキャンセルになった。その後の仕切り直しの発売で1公演のチケットを入手した。

 仕切り直しで入手できたのは、北村朋幹(きたむら・ともき)さんのピアノ・リサイタル。

 北村さんは、わたしにとっては未知の人だった。チケットを買ったのはプログラムに惹かれたから。実に凝ったプログラムだ。冒頭のバッハのカンタータからのコラールは、アルバン・ベルクのヴァイオリン協奏曲に引用されている曲。次はそのベルクのピアノ・ソナタ。3曲目がシェーンベルクの6つのピアノ小品。その第6曲はマーラーの死と関連付けられている。ここまでは死が背景にあるプログラム構成。

 4曲目はブラームスの晩年の作品、6つのピアノ小品。クララとのエピソードで知られている曲だ。次が武満徹の「遮られない休息」より第3曲「愛の歌」。上記のベルクのヴァイオリン協奏曲の冒頭部分が引用されている曲。最後がブルックナーの幻想曲。初めてきく曲だった。黙って聴かせられたら、シューマンかショパンの曲と思うだろう。ということで、後半は愛がテーマのプログラム構成。

 こういうプログラムを組む人はどういう人だろうと思ったら、今年20歳の東京藝術大学の在学生だった。演奏は、若者らしく、思い入れたっぷりの濃い演奏だった。武満徹の冒頭、最弱音で音楽が始まったときに、一人の女性が(どうしたのか)パタンとドアを開けて退出した。ハッとしたが、北村さんは動揺せず、演奏を続けた。

 もう1公演は、イギリスの声楽アンサンブル、ヴォーチェス8(エイト)によるブラームス、ブルックナー、レーガーの合唱作品の演奏会。ブラームスもブルックナーも、合唱に深くかかわったが、今までその作品に触れる機会がなかったので、この演奏会はぜひとも聴きたかった。

 小編成(8人)で、しかもノンヴィブラート唱法なので、どの曲も軽く、透明な演奏。音の線が美しく出た。しかもアンコール2曲が楽しかった。1曲目はブラームスの「子守唄」、2曲目はなんと「となりのトトロ」(!)。ジャズ風にアレンジしてあり、声でスネアドラムやマラカスの模倣をするのが面白かった。
(2011.5.5.東京国際フォーラム&よみうりホール)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする