Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

MUSIC TOMORROW 2012

2012年07月01日 | 音楽
 N響のMUSIC TOMORROW 2012。今年の指揮者はイギリス(というよりもスコットランド)の指揮者=作曲家のジェームズ・マクミラン。

 1曲目は法倉雅紀(のりくら・まさき)の「莫囂圓隣之大相七兄爪謁氣~オーケストラのための」。N響委嘱作品。題名の漢字12文字にぎょっとする。これは万葉集(法倉氏は「萬葉集」と表記)の額田王(ぬかたのおおきみ)の和歌だそうだ。その読み方は諸説ある。だれでもぎょっとする、その衝撃力に意味がある、という趣向だ。

 弦の激しいピチカートから始まる。破壊的なインパクトのある曲。「あっ、これはなんだろう」と思わせる。だがこういう書き方はほかの現代音楽にもあるような気がする。その先のものがあるかどうかは心許なかった。

 2曲目は尾高惇忠(おたか・あつただ)の「交響曲~時の彼方へ~」。尾高賞受賞作品。仕上げのよいテクスチュアーをもつ曲だ。デュティユーそっくり。デュティユーはデュティユーでよいが(わたしは好きだ)、さてそこを抜けたものがあるかどうか――。名門にふさわしい保守性を備えた曲、といえばいえるが、ひどくのんびりした曲に聴こえた。

 3曲目はマグヌス・リンドベルイの「パラダ」。これは音の鮮度がちがった。高橋智子氏のプログラム・ノートによると「光り輝く音のカーテン」と評されるそうだ。夜空にゆらめくオーロラ(わたしは一度だけカナダの山中で見たことがある)のような感じがした。

 三橋圭介氏によると「シベリウスの《交響曲第5番》の第1楽章にヒントを得た作品」だそうだ。なるほど、そうかもしれない、という気がした。リンドベルイ(1958~)と同世代のダルバヴィ(1961~)もそうだが、過去の音楽との断絶よりも、むしろ積極的なつながりを試みる動向があるのかもしれない。

 これはわたしたちの音楽環境と一致している。わたしたちはCDを取り換えながらシベリウスを聴いたり、現代音楽を聴いたりしている。そのような音楽環境とかみ合っているのだ。目の前の膨大な過去の作品と現代の作品。そこを肯定的に貫く方法として、意外に可能性を秘めているのかもしれない。

 4曲目は指揮者マクミランの「ヴァイオリン協奏曲」。2010年にレーピンのヴァイオリン独奏、ゲルギエフ指揮ロンドン交響楽団で初演されたそうだ。いかにもレーピンを想定したようなソロ・パートを、諏訪内晶子さんがアグレッシヴに弾き切った。
(2012.6.29.東京オペラシティ)
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