Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

広上淳一/読響

2012年07月13日 | 音楽
 広上淳一さんの指揮で読響の定期。

 1曲目は武満徹の「トゥイル・バイ・トワイライト」。片桐卓也さんのプログラムノーツを引用すると、「2つの音によるユニットを細かく組み合わせ」ながら、「音楽的な素材が形を取る前の姿――旋律以前、リズム以前の状態――を音として表現」した作品だ。

 日没から夜になるまでの時間――薄明(トワイライト)――を音で描いた作品。すべてのものが日中の色を失い、モノトーンの世界に沈んでいく。けれどもまだ色は残っている。なんとなく気だるい時間。時間が止まったような感覚。

 演奏は、輪郭の曖昧な音の絡み合いが、十分に表現されないうらみがあった。音の動きが表に出てしまった。そのため、この作品がどう書かれているかはよくわかったが、武満徹が意図したであろう音のイメージは得られなかった。

 2曲目はバルトークのヴィオラ協奏曲。いつものシェルイ補筆版ではなく、ピーター・バルトークとネルソン・デッラマッジョーレの校訂版(ポール・ニューバウアー再校訂の2003年版)であることが注目の的だった。

 一番驚いたことは、第3楽章の中間部でオーボエが民俗音楽的なテーマを吹いて、独奏ヴィオラがそれを引き継いだときのその奏法が、ハーモニクス(フラジオレット)だったことだ。この影響は大きい。バルトークの草稿はどうなっているのだろう。

 一方、オーケストラ・パートはシェルイ補筆版と大きなちがいはなさそうだった。この版が校訂版であって、補筆版ではない所以だろう。

 独奏ヴィオラはベルリン・フィルの首席奏者の清水直子さん。すばらしかった。今まで聴いたこの曲の演奏のなかでは、ユーリ・バシュメットの2回をふくめて、これが一番よかった。なにがよかったかというと、透徹した造形感があった。それが死を目前にしたこの時期のバルトークにふさわしかった。

 アンコールに譜面台が2つ用意された。なんだろうと思ったら、読響の首席ヴィオラ奏者の鈴木康浩さんとのデュオでバルトークの「44の二重奏曲」から2曲が演奏された。ソロではなくてデュオ。これは楽しい趣向だった。

 3曲目はリムスキー=コルサコフの「シェエラザード」。第3楽章までは淡々と流され、第4楽章ではぐっと踏み込んだが、全体としてはまっとうな演奏だった。申し訳ないが、あまりにもまっとうなので、途中から飽きてしまった。
(2012.7.12.サントリーホール)
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