Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ベルリン:松風

2013年02月14日 | 音楽
 「プロイセンの宮廷音楽」は午後3時半に始まって、午後5時に終わった。午後6時からはオペラの予定があったので、移動時間を考えると、ちょうどいい時間に終わった――と思ったら、それもそのはず、演奏家たちも移動するのだった。オーケストラピットには「プロイセンの宮廷音楽」に出ていた演奏家の姿が見えた。

 オペラは細川俊夫の「松風」。2011年5月にブリュッセルで初演され、ワルシャワ、ルクセンブルクに巡演した後、同年7月にはベルリンでも上演された。今回はその再演。

 2011年といえば、2月にベルリン・フィルの定期でホルン協奏曲「開花の時」が初演された。サイモン・ラトルの指揮、シュテファン・ドールのホルン独奏だった。そのときたまたまベルリンに行く機会があったので、わたしも聴きに行った。細川さんには温かい拍手が送られていた。

 2月にベルリン・フィルで、そして7月にベルリン国立歌劇場で、それぞれ新作が初演されたのだから、細川さんが築いた地歩がいかに確固としたものか、想像がつくというものだ。

 「松風」は同名の能が原作、作者は世阿弥だ。それをハンナ・デュブゲンがドイツ語の台本にし、細川さんが作曲し、サシャ・ヴァルツが演出・振付をした(コンテンポラリー・ダンス)。

 前作のオペラ「班女」は、同じ能といっても、三島由紀夫の「近代能楽集」が原作で、ドナルド・キーンが英訳したものを、細川さんが台本化したものだ。そもそもの性格はドラマだった。けれども今回の「松風」は、制作にサシャ・ヴァルツが深く関与していることから、――少なくともこのプロダクションで観るかぎりは――基本的にはダンスだ。

 ダンスとしては成功作なのだろう。だが、ドラマを求めると――わたしの場合はそうだったが――、肩すかしを食うプロダクションだ。

 歌手は初演時のメンバーが再結集した。松風はバーバラ・ハンニガン、その妹の村雨はシャルロッテト・ヘレカント。この二人はダンサーとともに舞台を動き回る。難易度の高い歌唱パートをこなしながら、ダンサー並みに動き回るのだから、世の中、ここまで進歩したのかと驚いた。たしかにこの二人なくしては、このプロダクションは成り立たないだろうと思った。

 指揮は、初演時はパブロ・ヘラス=カサドだったが、今回はデイヴィッド・ロバート・コールマンという人に変わった。
(2013.2.3.シラー劇場)

↓舞台の映像
http://www.youtube.com/watch?v=8S6JaoOSRfc
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