Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラ・フォル・ジュルネ(2)

2014年05月06日 | 音楽
 今年のラ・フォル・ジュルネで聴いたもう一つの演奏会は、現代アメリカの作曲家デイヴィッド・ラングの合唱曲を中心にした演奏会だ。合唱はヴォックス・クラマンティス、指揮はヤーン=エイク・トゥルヴェ。

 デイヴィッド・ラングDavid Lang(1957‐)という名前は知らなかった。ラ・フォル・ジュルネのプログラムが発表になったとき、未知のこの名前を見て、興味をもった。調べてみると、「マッチ売りの少女の受難曲」という作品で2008年のピューリッツァー賞音楽部門を受賞している。CDが出ているので、買ってみた(ポール・ヒリヤー指揮シアター・オブ・ヴォイシズ)。

 これは傑作だと思った。アンデルセンの童話「マッチ売りの少女」に基づいているが、そこにイエスの受難の物語を重ねている。音楽はシンプルかつ静謐。アルヴォ・ペルトに似ている。その音楽がアンデルセンの童話と完全にシンクロしている。初めて聴いたそのときから涙がこみ上げた。

 たぶんヘルムート・ラッヘンマンの「マッチ売りの少女」に触発されているのだろうと想像したが、ラング自身のライナーノーツには、そのことは触れられていなかった。もちろんラッヘンマンよりもはるかに聴きやすい。ラッヘンマンのような脱線もない。

 ともかくこの曲を聴いて、一気にラングに注目した。で、この演奏会だが、ラングの合唱曲5曲を中心に(その中の3曲は「マッチ売りの少女の受難曲」のCDに収録されていた)、ジョン・ケージの2曲とグレゴリオ聖歌2曲がはさまれる構成だった。

 ケージの「18の春のすてきな未亡人」から始まった(風変わりな題名だが、これはジェームズ・ジョイスの「フィネガンズ・ウェイク」からケージが部分的に言葉を切り取って再構成したそうだ)。演奏にもよるのだろうが、この演奏ではグレゴリオ聖歌のように聴こえたのが面白かった。

 以下、ラングの合唱曲、グレゴリオ聖歌、そしてまたラングの合唱曲という具合に進んだ。ラングの「再び」では、男声が客席に分散して配置され、ステージ上の女声と織りなすテクスチュアーがわかりやすく演奏された。同じくラングの「愛は強いから」でも同様の配慮がなされていた。

 初めて経験する「よみうり大手町ホール」の音響もよかった。ひじょうに聴きやすい素直な音だ。ア・カペラの合唱でそれを確認できたことはラッキーだったかもしれない。
(2014.5.4.よみうり大手町ホール)
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