Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ペーテル・エトヴェシュの音楽

2014年05月23日 | 音楽
 エトヴェシュがN響を振るというだけで、おっと思うが、曲目がリゲティと自作品となると、さらに期待が膨らむ。こんな機会はめったにない。

 1曲目はリゲティの「メロディーエン」。CDや放送では聴いたことがあるが、生では初めてだ。どういう音がするのかと身構えたが、小規模なスケッチ風の曲のように感じてしまった。意外だった。少し物足りなかった。

 2曲目はエトヴェシュの「スピーキング・ドラム」。パーカッション・ソロを伴う曲だ。マルティン・グルービンガーが、奇声をあげながら、各種の打楽器を叩きまくる。これは傑作だ。傑作という言葉は‘お笑い’という意味で、だ。まさに呆気にとられ、笑ってしまった。エンタテイメント性に富んだ曲。YouTubeでアップされていたが、期間限定だったので、見そこなった。でも、それでよかった。なにも知らないでこの曲を聴いてよかった。生でないとこの面白さはわからないと思う。

 休憩をはさんで、3曲目はリゲティの「サンフランシスコ・ポリフォニー」。これは名演だった。劇的なインパクトのある演奏だった。CDでは聴いたことがあるが、こんなにスケールが大きくて、雄弁な曲だとは思っていなかった。エトヴェシュの指揮者としての力量をまざまざと感じた。今後も定期的にN響を振ってくれないものかと思った。

 4曲目はエトヴェシュの「鷲は音もなく大空を舞い」。カホンという特殊な打楽器を2台使い、それだけでも興味を引いたが、それだけではなく、曲のあちこちに顔を出す意外に親しみやすいフレーズに惹かれた。エトヴェシュの知られざる一面を見る思いがした。

 5曲目はエトヴェシュの「ゼロ・ポインツ」。ロンドン交響楽団とブーレーズの委嘱作品とのこと。音の洗練された感覚や音響の変化は、ブーレーズを意識しているのかと思ったが、そこだけでは収まらない活発さがあって、それが面白かった。やんちゃ坊主のような元気のよさが、年を取ってからも出てくる人がいるが、そんな感じだった。

 会場は(2曲目から)沸いていた。2曲目と5曲目は、拍手が鳴りやまないので、最後の部分がアンコール演奏された。これでまた沸いた。温かい拍手だった。

 リゲティと対比すると、エトヴェシュの音楽には肉体性というか、頭で考えただけではなく、体の奥底からにじみ出てくるものがあった。それを感じたことが(自分にとっての)一番の収穫だった。
(2014.5.22.東京オペラシティ)
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