Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

みつばちの大地

2014年06月19日 | 映画
 映画「みつばちの大地」。その予告編(※)を見たとき、これは絶対に見たいと思った。黄金色に輝く映像。こんなにきれいな映像は見たことがないと思った。

 実際、美しい映像だった。ミツバチの生態がアップで捉えられている。巣の中のミツバチ、空中を飛行するミツバチ。これらをどうやって撮ったのだろう。驚異的な映像だ。

 もっとも、この映画は、たんなる自然科学の映画ではない。ミツバチを飼育する世界中の養蜂家を訪ねて、今ミツバチに何が起こっているかを取材する。そして、その原因や、そこから見えてくる現代の問題を明らかにしようとする。

 マークス・イムホーフ監督(1941年スイス生まれ)は、この映画の製作のために5年をかけ、地球4周に匹敵する距離を移動したそうだ。

 在来種にたいする(人間が持ち込んだ)異種の侵入、農薬の使用による脅威、1000キロを超えるトラック移動のストレス、その他の過酷な環境に置かれたミツバチの現実、そして大量死などが描かれる。それらを見ていると、暗然とする。地球の生態系にとって最大の脅威は‘人間’だという気になる。

 でも、それだけなら、よくある論調でもあるだろう。この映画で面白いのは、そのような論調で出発したにもかかわらず、途中から少しずつトーンが変わっていくことだ。

 ベルリン自由大学のメンツェル教授が登場する。ミツバチは約5万匹でコロニーを形成する。「5万の小さな脳は、1つの超個体を構成する。それは、騒がしい茶色の塊ではない。」そして、こういう「ミツバチのコロニーという複雑な組織体は、感情を持つ1つのシステムとしてみなすことができるでしょうか?答えはイエス。コロニーには感情があります。」(プログラムに掲載された採録シナリオより)

 なんとも驚くべき生態だ。その繊細さに感心する。そして、さらに先に進む。「人類の食料の3分の1は、ミツバチに依存する。」アインシュタインは、こういったそうだ「ミツバチが絶滅すれば、4年後に人類は滅びる。」でも、そうだろうか、アインシュタインは間違っているのではないだろうか?「きっと最後は、私達が死に絶え、ミツバチが生き残るのではないでしょうか。」(プログラムに掲載された監督インタビューより)

 映画はこのインタビューの言葉を示唆して終わる。たんなる告発の映画ではなく、ミツバチにたいする讃歌にいたる点が気持ち良い。
(2014.6.17.岩波ホール)

(※)予告編
http://www.youtube.com/watch?v=yNKqfPVvdzs
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする