Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ロルカとアンダルシア

2014年07月01日 | 音楽
 オペラ「アイナダマール(涙の泉)」のプレコンサート「ロルカとアンダルシア」。伊礼彼方(新国立劇場が上演したシェイクスピアの「テンペスト」でファーディナントを演じた役者)が、スペインの詩人ガルシア・ロルカ(1898‐1936)に扮し、その生涯を語る。多数のフラメンコが歌われ、かつ踊られる。舞台装置はアンダルシアの酒場。

 フラメンコを歌った歌手がすばらしかった。石塚隆充という人。素人の感想ではあるが、その節回しとスペイン語には本物の味があった。その歌を聴いていると、アンダルシアの哀歓が感じられた。強い酒を飲みたくなった。すべてを投げ出して酔いたくなった。そんな危険な誘惑があった。

 石塚隆充はオペラ「アイナダマール」にも出演予定だ。悪役のルイス・アロンソ役。またあの歌が聴けるのが楽しみだ。

 オペラ「アイナダマール」はロルカの生涯を扱っている。ロルカは1936年にファシスト党に銃殺された。政治的な人間ではなかったにもかかわらず――。オペラはそんなロルカを盟友のマルガリータ・シルグが回想するかたちで進む。呼びかけても答えてくれない死者に、生者が呼びかけるとは、どういうことか。そんな辛さがある。

 「アイナダマール」は2011年に別団体が上演を予定していた。けれども、諸事情により取りやめになった。あのときはがっかりした。今回それを日生劇場が引き継ぐかたちで上演する。これは嬉しい。今回プレコンサートが開かれたのもそのお蔭だろう。

 「アイナダマール」の作曲はオズバルド・ゴリホフOsvaldo Golijov(1960‐)。アルゼンチン生まれの作曲家だが、両親は1920年代にルーマニアとウクライナから渡ってきたユダヤ系の人たちだ。そのゴリホフがプレコンサート後のアフタートークに登場した。穏やかで笑みを絶やさない紳士だった。

 ゴリホフの代表作に「マルコ受難曲」がある。CDが出ている。ナクソス・ミュージックライブラリーにも登録されているので(※)、アクセス可能な方には一聴をお奨めしたい。ともかく、びっくりすること請け合いだ。わたしは感動した。そして何度も聴いた。

 この曲は2000年のバッハ・イヤーに国際バッハ・アカデミーが委嘱した4人の作曲家の受難曲のうちの一つだ。ゴリホフの他には、グバイドゥーリナがヨハネ受難曲、リームがルカ受難曲、タン・ドゥンがマタイ受難曲を書いた。
(2014.6.29.日生劇場)

(※)↓「マルコ受難曲」
http://ml.naxos.jp/album/CD98.404
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