Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

デュフィ展

2014年07月15日 | 美術
 デュフィ展。デュフィ(1877‐1953)の作品はどこかで見たことがある。きれいな絵だと思った。でも、デュフィがどういう画家であるかは、知らないままだった。

 そのデュフィの展覧会。デュフィのことを認識するよい機会だ。こういう機会に見ておかないと、デュフィを知らずに過ごしてしまう。

 デュフィの作品をどこで見たのか、はっきりしなかったが、会場で見覚えのある絵があった。そうだ、この絵だと思った。箱根のポーラ美術館だ。ポーラ美術館は、箱根の山を歩いたついでに、年1回くらいは行くので、そのとき見たのだろう。

 その作品は「パリ」。縦長の4連画の構成だ。エッフェル塔やモンマルトルの丘が描かれ、向かって左から右へ、朝、昼、夕暮れ、夜と推移する。明るく透明な空気感がある。いかにもデュフィらしい。画像を紹介したいのだが、ポーラ美術館のデータベースには載っていない。その代わりに他の2作品の画像が載っているので、ご参考までに(※1)。いずれもデュフィらしい作品だ。

 では、デュフィらしいとは、どういうことか。一言でいえば、線と色との分離だ。線で描かれた形態と、そこに塗られた色とが、少しずれている。具体的には、はみだしたり、線まで届かなかったりしている。塗り絵のようだと、本展を見るまでは思っていた。でも、本展を見たら、塗り絵という言葉は浮かんでこなかった。

 ものすごく自由な感覚だ。線は線で動き、色は色で動く。楽々とした、透明な世界だ。

 デュフィは音楽が好きだった。最晩年の作品に「ヴァイオリンのある静物:バッハへのオマージュ」と「クロード・ドビュッシーへのオマージュ」がある。事前に本展のホームページで見ていた(※2)。これがバッハで、あれがドビュッシーだと、それぞれ必然性があるのか、それとも気まぐれの命名か‥。

 実際には、「バッハ」は、ヴァイオリンの墨のような黒が異様だった。その黒とそれを囲む赤とのコントラスト、さらには青とのコントラスト。それぞれ画然と区別されている。対位法の音楽のようだと思った。一方、「ドビュッシー」は、緑、黄緑、黄へと滑らかに推移する。音色の変化のようだと思った。

 デュフィは指揮者のシャルル・ミュンシュ(1891‐1968)と親交があって、そのリハーサルに通ったそうだ。たんなる音楽好きの域を超えた人だったのかもしれない。
(2014.7.14.Bunkamura)

(※1)ポーラ美術館のホームページ
http://www.polamuseum.or.jp/collection/artist/%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%A5%E3%83%95%E3%82%A3/

(※2)本展のホームページ
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/14_dufy/exhibition.html
コメント (4)
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