Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

高関健/東京シティ・フィル

2017年05月11日 | 音楽
 さて、今回の旅で観たオペラの記録を書くべきところだが、その前に昨日、東京シティ・フィルの定期を聴いてきたので、まずその感想から。

 指揮は高関健。1曲目は武満徹の「3つの映画音楽」。3曲のキャラクター・ピースを集めたものだが、今回の演奏では、第1曲の「ホゼー・トレス」がジャズ風のリズムが明瞭に出ていてよかったと思う。

 2曲目はベルクのヴァイオリン協奏曲。ソリストは堀米ゆず子。堀米ゆず子の演奏を聴くのは久しぶりだった。舞台に登場したその姿を見て、見違えるような想いがした。貫禄がつき、堂々として、しかももっと本質的なことには、ヨーロッパの文化に深々と根を下ろした空気感が漂っていた。もうすっかりヨーロッパのベテラン演奏家だ。

 演奏は比較的淡々としていたが、そこにとどまらずに、そこを突き抜けた、澄んだ、品のよい存在感があった。ヴァイオリンの音がオーケストラに埋もれず、いつも明瞭に聴こえたが、その音には犯しがたい気品があった。オーケストラもよかった。音の艶が失われることなく、アンサンブルも丁寧だった。

 3曲目はブルックナーの交響曲第3番(1877年第2稿。ただし第3楽章スケルツォのコーダはカット。わたしはこれらの選択に共感する。なお、高関健の5月9日のツィッターにショッキングな事実が書かれていた。それによると、1889年第3稿の第4楽章は、シャルクが書いた譜面にブルックナーが手を加えているそうだ。どうりで‥と)。

 演奏は名演だった。ゆったりとした流れが根底にあり、そこに重心が低く、奥行きのある、充実した音が乗った。高関健のブルックナーは以前にも聴いたことがあるが、そのときとは別人のように、柔軟でニュアンスに富んだ演奏になった。

 コンサートマスターにゲストの荒井英治が入った。オーケストラはコンサートマスターが変わると音がリフレッシュすることがあるが、今回はその一例だ。また、高関健は4月にサンクトペテルブルク・フィルを振ったばかりなので、その余韻が身体に残っていたかもしれない。

 トランペットの1番に若い女性が入っていた。最近見かける人だ。この人にはアンサンブルのセンスがあると思う。トランペットの1番にそういう人が入ると、金管全体の音がまとまり、充実した響きになる。この人はオーケストラの宝物になるかもしれない。
(2017.5.10.東京オペラシティ)
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